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キキとの対決

キキと俺は一緒にパーティ会場に戻る。そういえばキキはどうやって誰にも気づかれずに中庭に出てきたんだ? 今も周りの冒険者達はキキがいることに気付いた様子はない。何かの魔法なのかもしれないな。

 

「なんで今誰にも注目されていないんだ? 何かの魔法か?」

「正解。ちょっとした魔法でね。地味だけど便利なの。じゃあちょっと司会と話してくるわ」


「皆様、ただいまキキ様からのご提案があり、格闘のパフォーマンスをしていただけるようです! キキ様には戦闘能力もあり、守られるだけのひ弱な女性ではないということを証明したいとのことです。 このパーティ会場の真ん中で披露していただけるようですので、皆様は端に寄っていただけますでしょうか? 対戦相手はチーム夢の羽です! 全員LV3の3名とキキ様1名での格闘戦となります」

 司会が早速大声でイベントの開催を告げる。やれやれ、本当にやらないといけないようだ。

ざわめく会場。ただ、皆興味津々だ。確かにキキが戦闘能力もあるなんていう話は聞いたことがないからな。どうなるかについては興味がある。


「おい、なんでこうなったんだ?」

「すまない、俺だ。色々あってな…… 戦うことになった」

「これは本気で戦うの?」

「らしい。キキは自信満々だったな。ただ、剣と魔法は禁止とのことだ」

「それで3名だったのね。私は参加しないというわけね」

「そうだな。俺とライエルとマルクでキキとの対戦だよ。色々不安しかないが…… まあいい機会だ。キキとお偉いさんと仲良くなれるように頑張ろう」

 何があったのか、と困惑を隠せないメンバーに俺はざっと説明する。しかし本当に全力で勝負して大丈夫なのだろうか。間違って怪我でもさせるとライブが中止になりかねないぞ。俺達はサークル上に開かれた会場の真ん中に向かう。


「今回の格闘戦は剣と魔法は禁止になります。キキ様が怪我する心配をされている方もいると思いますがそこはご安心ください。ヒール持ちの魔法使いを複数人待機させていますので、終了次第すぐに回復できる予定です。なので夢の羽の皆様は全力で闘いください、とのことです」

 なるほど。ヒールがあったか。じゃあ本気で行くしかないな。LV3程度ではあるが恥をかかない程度に全力をアピールしておかなければ後で冒険者達に馬鹿にされかねない。


 キキと対峙する。先ほどまでのパーティドレス姿から変化し、いつの間にか戦闘服に着替えており、靴も普通の運動靴となっている。どれほど強いのかお手並み拝見とさせてもらうか。


「それでは戦闘開始!」

 お互いに戦闘の構えを取る。キキは両腕を高く掲げ、ガードをする姿勢をとっている。こっちから攻める必要がありそうだな。

「よし、一気に攻めるぞ!」

 ライエルの宣言に合わせて俺達は走って攻撃に向かう。三方面からの同時攻撃だ。しかしキキが一歩後ろに下がることで回避される。そして次の攻撃をしようとした瞬間、激しい蹴りが俺達を襲う。咄嗟にガードしたため、ダメージは大きくないが、全員が後ろに吹き飛ばされる凄まじい回転蹴りだ。


「さて、こっちのターンね」

キキはまずマルクに狙いを定めたようだ。パンチと蹴りのコンビネーションでマルクを攻撃する。鋭い攻撃のためマルクは防戦一方だ。最後に前蹴りで強制的にスペースを作られてしまう。


その瞬間、ライエルが飛び込む。1番パワーとスタミナがあるので、キキにとっては強敵だろう。だが、ライエルの攻撃は一つも当たらない。全て読まれているように躱されていく。魔法は禁止というルールのため心を読んでいる訳ではないのだろうが、見切りが非常に上手い。そしてカウンターで一撃。ボディを殴られライエルは悶絶する。ライエルを一撃で粉砕するパンチか……


「一名、ダウンです! 退場となります。残りは2名、どうなるのでしょうか!」


 俺とマルクは距離をとりながら隙を窺う。キキは笑みを讃えながらこちらを見ている。攻めるしかなさそうだな。

「マルク!俺達で同時に攻めるぞ!」

「わかった!」

 

 前後からの挟み撃ちである。前からはマルクが、後ろからは俺が、キックやパンチを加えていく。しかしキキの戦闘能力は凄まじい。どの攻撃も当たらず躱されていく。そして前蹴りで距離を取られる。


ぱっ。マルクの蹴りが掴まれ、マルクの急所にパンチを一発。マルクも悶絶し、ダウンだ。残りは俺1人。これは参ったな。負けは確定のようだ。生命の危機にはならないだろうから変身が解除されることはないだろうが、変身を解除しないでの勝ち筋は見えない。潔くやられるしかなさそうだ。そんなことを考えていると、キキがこちらに突進してくる。


フック、ストレートの連打である。俺はガードを固めながら隙を窺うのが精一杯だ。されにローキックやハイキックが飛んでくる。凄まじいスピードだ。一発一発の攻撃は強くはないが急所を的確に狙って攻撃してくる。


ぐふっ。ローブローが腹に命中する。そしてハイキック一閃。俺も倒されてしまった。


「3名のダウンを確認しました。勝者はキキ様です!」

 マイクがキキに渡される。

「皆様いかがでしたでしょうか? 私は戦闘能力にそれなりに自信があるという理由をわかっていただけたかと思います。今回は使用しませんでしたが、私には魔法もあるのでそれなりに自分の身を守ることは出来ますのでご安心ください。また、夢の羽の皆様には全力で戦うようにお願いしましたが、躊躇うことなく攻撃してきてくれました。彼らにも拍手をお願いします」

 大きな拍手が湧き起こる会場。俺達3名はヒールで回復してもらいながらそれを眺めていた。

「完全に負けたな」

「あんなに強いと思わなかったよ……」

「ああ、普段から訓練をしているんだろうな。更に魔法も加わるとかなり強そうだ」


「ということで、そこそこの相手には自身で対応できるので安心してくださいね」

そうキキが笑った次の瞬間、明かりが全て消え、真っ暗になる。


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