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情報収集

18時。約束通りに夢の羽のメンバーは使者が宿泊するホテルに来ていた。綺麗ではあるがそれほど豪華なホテルではない。やはりカミラ姫の使者として目立たないようにしているのだろう。王族関係者が宿泊するレベルのホテルではない。身分を隠している可能性もありそうだ。


「皆様、ありがとうございます。ついて来てください」

時間通りに現れた使者の後をついてホテルの階段を歩く。最上階。たどり着いた部屋は予想以上に大きな部屋だった。

「すごい、10人くらい宿泊できそうですね」

「ええ、このホテルで1番大きい部屋です。アリエッサ様から打ち合わせ用に大きい部屋を借りるよう言われたので今日だけここをお借りしています。あまり目立ちたくはなかったのですが…… 仕方ないですね」


「アリエッサ様は?」

「中でお待ちです。アン様とエッジ様も一緒です。どうぞこちらへ」

 部屋の中に、ホテルとは思えないダイニングスペースがある。食事をするスペースだろう。そこにはアリエッサとエッジとアンが待機していた。


「さて、皆揃いましたね。では打ち合わせを始めましょうか。夢の羽の皆さんは無事依頼を受けることができましたか?」

「ああ、問題ない。俺とカミトは巡回警備を、アズサとマルクは荷物や身体チェックを担当することになった」

「なるほど…… とりあえず潜入できそうでよかったです。こちらはアンとエッジを警備役として追加することが出来ました。当日の監視は問題なさそうですね」

「規模を考えると少し人数が足りない気がしますが…… 大丈夫でしょうか?」

 少し声が震えているのがアズサだ。緊張しているのだろう。よく考えると敬語も使わず堂々と発言しているライエルは強いな。普段から敬語を使うことは一切ないし、緊張している姿を見せないのは、元来そういう性格なのだろう。

「ええ、問題ないでしょう。どうせサクラの秘宝は盗まれます。その後で接触できる体制があれば問題ないです。

私の予想ですが、怪盗とのかくれんぼになるでしょうね。ステージの中心で歌うキキから秘宝を盗むとして、その後の逃走はかなりハードルが高いものになります。大量の冒険者やパニックになる観客をかわしながら逃走するのは大変です。なんらかの方法でどこかに隠れてやり過ごすというのが自然でしょう。その捜索に関われるメンバーがいれば十分かと」

「なるほど、理解しました」

「とりあえず第1ステップはクリアですね。では次は情報収集をお願いしたいです。裏社会や情報屋との接点がある方はいますか?」

周りを見渡すが誰も反応しない。いなさそうなら俺が手を挙げるか。

「はい、情報屋なら知っています」

「カミトさん、でしたっけ? では情報屋との接触をお願いできますか? そしてその際ですがヘッドオブドラゴンとの関係性をアピールしてください。既に犯行予告を出している怪盗としては登場キャラが多いとハードルが上がります。何かしらの探りを入れてくるかもしれません」

「わかりました」

 アリエッサは自然とあまり知らない人物のフリをしてくれる。さすがアリエッサだ。エリスなんかだとボロを出しかねないからな。アンとエッジも嘘をつけないタイプなのでとりあえず黙っていればOKだ。


「情報屋から何かを聞き出せたら、使者に連絡するようにしてください。それでまた集まりましょう。


後、皆さんはライブ2日前のパーティに参加するようにしてください。そこで警備の偉い人との人脈を作ること、もしくはキキとの人脈を作ることを目標にしてください。有能さをアピールすることが出来れば理想ですね」


「わかった。ヘッズオブドラゴンの皆様も参加するのか?」

「エッジとアンのみ参加します。他のメンバーは参加しません。連携については考えなくて大丈夫です」

「了解だ」



 その日の夜、俺は情報屋の元へ向かう。話がややこしいのでLV10のカミトとして訪れることにした。サクラには、あまりお金のない者たちが住むエリアが存在する。子供は親に「危ないから近寄っちゃだめ」と言われるようなエリアだ。確かにすぐに誰かに絡まれる危険な地域のため、腕力に自信のない者は近づかない方がいい。俺はボロボロの掘立て小屋ばかりの道を進んでいく。ちなみにどうすれば絡まれないか? 簡単である。剣を鞘から出しながら歩けばいいのだ。それでも近づいてくるような危険なやつは切り捨てれば誰も近寄ってこなくなる。


「おーい、ルイスはいるか?」

目的地の寂れた一軒家。玄関で声を出すとすぐに返事があった。

「カミト様ですか。お久しぶりです。どうされましたか?」

情報屋のルイスが現れる。一見するとどこにでもいる普通の中年おじさんなのだが、持っている情報量は桁違いである。裏社会の事情から王家の揉め事までなんでも知っているので、何かと頼りになる男だ。


「急にすまないな。今、「偉大なる怪盗」と呼ばれる盗人の情報を探している。何か持っていないか?」

俺は金貨を3枚投げる。これがこの情報屋の基本価格だ。基本的に金貨を3枚支払わなければ俺が相手でも何も話してくれない。それだけ自分の仕事にプライドを持っているということだな。


「ありがとうございます。偉大なる怪盗ですか。もちろん存在は知っています。ただ、裏でも表でもあまり情報がない存在なんですよね。ただ…… 昔一度だけ裏の仕事を請け負ったことがあるとは聞いたことがあります。怪盗は男、後は連絡役に女がいたようです。2人組で行動していたと聞いています」


「顔であったり魔法の特徴であったりは不明か?」

「はい、その際も仮面をつけていたようです。魔法についても不明ですね。盗みに入った際に乱戦になった経験がある警察関係者曰く、肉体のみで凄まじい実力で、魔法を使わずに制圧されたと話していました。


変装が得意なのでは? という話は昔からありますが、変装はしないようです。先ほどの裏の仕事の際に、依頼者がなぜ仮面を被るのか?と尋ねると変装が苦手だからと回答されたと聞いています。

 

私が把握している限りはこんなところでしょうか?追加での情報収集も可能ですが、あまり期待はできないです。何せ活動が年に2回ですので情報が少なすぎます。申し訳ございませんが」


「わかった。それだけ分かれば十分だ。助かった」

「いえいえ、また何かあれば言ってください。では」


俺は情報屋の拠点を後にする。とりあえず、それなりの情報は得ることができたな。後は向こうから何かしらのリアクションがあるといいが……。


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