キキのコンサート詳細
「他に何か質問はありますでしょうか? 特に何もなければ私はホテルに戻ろうかと思いますが」
「ちょっと議論をするから待っていてくれるか?」
使者は帰りたそうにしているが、何か疑問が出てくるかもしれない。しばらく待機しておいてもらおう。
「ライブについて詳細を知っている者はいるか?」
「この前、ビラを貰ったからそれを持ってきますね…… えーっと、ライブは来週の土曜日、19時から開始予定ですね。場所はサクラ外れにあるスタジアムです。最大規模の会場だからでしょう。5万人くらいは入場できるはずです」
ビラを手に入れたというエッジが説明してくれる。かなりの規模の会場だな。さすが世界の歌姫、5万くらいであれば余裕で集めれるというわけか。
「夜ですか…… スタジアムの中は魔道具で明るいでしょう。ただ、それでも暗い部分はあるでしょうね。そしてスタジアムの外は暗いので逃げられると確保は困難になるでしょう」
アリエッサの言う通り、夜でも稼働する施設には、光を照らす魔道具が設置されている。スタジアムの中も明かりで照らされているはずだ。ただ、ありとあらゆる場所が明るいわけではないだろう。死角が多数発生するであろう、警備する側としては厄介な展開だ。
「警備担当は警察……?」
「警察と冒険者になります。怪盗の犯行予告が出る前の警備計画策定に関わっていましたが、予定ではシールドオブワールドの下級冒険者達が主体となって警備を行う想定でした。現状どうなっているかはわかりませんが、主体がシールドオブワールドであることは変わりがないと思います」
サクラ最強のチームの一つであるシールドオブワールド。1番の特徴は所属人数が多いことだ。LVの低い冒険者も多数所属しているため、こういった大規模作戦には相性が良いチームである。また、リーダーのジェフは極めて常識のある冒険者だからな。治安維持活動などにはよく関わっている。今回もそういう繋がりだろう。
「我々が関わるのは…… 難しいですかね」
「そうね。少なくともマスターや私、エリスといった最高レベルの冒険者を警備送りこむのは政治的な都合で難しいと思うわ。向こうからするとシールドオブワールドでは警備が不十分だと言われているようなものになるからプライド的にも、側からの評価を考えても断られるはず。ただ、貴方やエッジであれば何かしらの理由を付ければ送り込める可能性はあるわ。特殊なシーンで活躍する存在である、という建て付けが可能だわ」
「そうだな。エッジはキキの防御役、アンはコンサート周辺の監視に最適だろう。それはジェフに言えば受け入れてくれる可能性はあるな。そこの調整はアリエッサ、お願いできるか? 俺が出ていくと大事になったり、裏を疑われる可能性がある」
「ええ、そうですね。あくまで善意であるとしておきます」
「私達だけで行動するのですか? 少し不安があるのですが……」
「いや、そういうつもりはないよ。俺は…… そうだ、夢の羽で潜入できないかな? 何か雑用の依頼があればそれを受けて潜入するのはあるかもしれない」
「そうですね。今なら警備を増強する必要があるでしょうから、何か警備などの仕事を募集している可能性があります。それはいいですね」
「使者さん、夢の羽もこの依頼に巻き込むことはできるか?」
「ええ、可能だと思います。皆様にはお伝えしておりませんでしたが夢の羽向けの手紙も姫より預かっています。こちらは協力要請であると推測しています」
「予定通りってわけね。まあいい。じゃあ夢の羽は巻き込もう。基本は俺とアンとエッジでライブ会場に潜入し、怪盗を捕捉する。夢の羽の他のメンバーは情報収集係だな。アリエッサは全体の指揮係で頼む。後、エリスはライブ会場の外で待機して何かあったら駆けつけることができるように待機してもらえるか?
で、あとは出たとこ勝負になるが…… 盗む前か盗んだ後の怪盗を捕捉し、戦闘。撃破した上で支配の腕輪をつける、と。まあこんな感じだな」
「ええ、それで良いと思います。当日までは、情報収集に努めましょうか。私としては、姫の予測にあった、情報収集役を見つけることが出来れば理想と考えています」
「確かにそれは理想的な展開だ。ただ当てはあるのか?」
「いえ、ないです。ただ、色々コンサートについて嗅ぎ回っている者がいないかを探っていく形になると思います。裏稼業の可能性もあるのでそっちも探ってみます。この探索については私とエリスで行うのが良いでしょう。我々が探している、ということが向こうに伝わればそれだけでプレッシャーを与えることもできると思いますので」
「それは間違いないな。よろしく頼む。裏の者であれば何名か殺してプレッシャーを与えても問題ないだろう。そのあたりは任せるよ」
「はい、承知しました。また、夢の羽との調整も私の方で行います。マスターはLV3として何も知らない顔で参加していただければと思います」
「ああ、よろしく頼む」




