さらなる襲撃 〜後編〜
「カミト様! 後方で魔法攻撃を受けており、苦戦中です! 支援を願います!」
騎士の叫び声に振り返る。その直後、大量の弓矢が降り注いだ。
「プロテクト」
俺は第3の魔法を発動する。その瞬間、馬車を中心に透明の盾が出現し、全ての弓矢を受け止めた。
これが第3の魔法、プロテクトだ。この魔法は半径5mに渡り自由に透明な盾を生み出すことができる。龍を除いてこの魔法を突破できる攻撃にはお目にかかったことがない、地味だが強力な魔法である。ただ守れる範囲が広くない。俺は急いで後方に駆けつけた。
弓矢が刺さり倒れている騎士達を発見する。既に何名かは絶命していそうだ。通常の弓矢では騎士の防御を突破できないだろう。これは魔法攻撃と判断し、警戒を継続する。
「アリエッサ! 騎士が倒れた! ヒールを発動して欲しい!」
すぐにアリエッサが現れ、ヒールをかけまた戦闘に戻っていく。前方の戦闘も余裕がなさそうだ。
「プロテクト」
二発目の弓矢攻撃を俺は受け止める。これは厄介だ。エリスを巻き添えにしかねないのでこちらから絶剣で攻撃することもできない。俺は歯痒い思いをしながら防御を継続するのであった。
「魔物以外に兵士も混ざっていたよ。一名昏倒させたから戻ってきた……」
エリスが帰還する。捕虜を確保したのは大きい。情報を聞き出すことができる。
「良くやった。俺も戦ったが薬物か何かで自害された。縛り付けておいた方がいい」
「わかった……」
亡くなった騎士が3名、負傷し馬車に戻ったのが2名。エリスが戻ってきた今、後方を守る者はいない。逆にいうと、同士うちのリスクは亡くなった。
「いくぞ。絶剣。くらえ!」
俺は空中に大量の剣を浮かばせる。目指すは後方だ。何も見えないので適当にぶん投げるしかない。大量の剣が暗闇に消えていった。
その後、魔法攻撃が止んだ。弓矢の魔法の使い手は死んだか、負傷し撤退したかだろう。俺は一息ついた。
「前方ですがほぼ殲滅に成功しました。現在はアンによる掃討戦が行われています」
「おお、良かった。後方もおそらく大丈夫だろう。しばらくは警戒が必要だが、終わったとみてもいいんじゃないか」
「そうですね」
「掃討、終了しました。敵の存在は確認できません」
アリエッサの報告に応える。アンが無事に掃討を終え、戦闘は完全に終了したようだ。皆でカミラ姫の馬車に戻る。
「戦闘、終了しました。敵は壊滅したと思われます」
「ありがとうございます。騎士も2名も生かしていただき感謝しています」
「いえ、全員を救うことができず申し訳ございません。これから捕虜に尋問をしようと思いますが、姫様も参加されますか?」
「ええ、お願いします。」
俺とカミラ姫はチームの馬車に移動する。馬車には、縛られ転がっている捕虜がいた。俺は強めに蹴飛ばし、目を覚まさせることにする。
「起きたか。お前は革命軍か?」
「ああ、そうだ。俺は革命軍だ」
「そうか、予想通りだな。それじゃあ色々話してもらおうか。良い情報を話してくれれば命は助けるかもしれないぞ?」
「結構だ。俺は何も話さない。カミラ姫が生きているのは残念だが、この後は同志に任せよう。「王家に死を!」」
そう叫ぶと捕虜となっていた兵士は何かを噛み締める。あ、と思った時には時すでに遅し、苦しみながら死んでいった。
「やられましたね。歯に毒を仕込んでいたのですね」
「ええ…… 革命軍であること以外は聞き出せず申し訳ございません」
「いえ、構いません。しかし困りましたね…… ここまで首尾よく攻撃されているとなると確実にルートと居場所が特定されていると判断して問題ないでしょう。遠視などで監視されている可能性はありますか?」
「遠視の最大距離は300m程度と言われています。その距離であれば魔法の作動を感知できますので、その可能性は低いでしょう。」
俺はカミラ姫の問いに一般論で回答する。特殊な魔法の可能性もあるが…… 流石にそんな貴重な人材が革命軍にいるとは思えない。
「後ろから付けられている可能性は…… ないでしょうね。流石に私の騎士たちは尾行に気づかないほど無能ではないです」
カミラ姫によると今回亡くなった一人の騎士は、半径150m以内の一定の大きさ以上の生物を感知する魔法を保有していたとのことだ。流石に150m以上離れると遠視なしでは尾行は難しい。しかし遠視が使われた気配も尾行された気配もないということは……
「誰かが情報を逐次漏らしている、としか考えられませんね。何らかの形で革命軍に情報を伝えているのでしょう。スパイがいると判断して良さそうです」
執事かメイドか、それとも騎士か?ヘッズオブドラゴンのメンバーの可能性もあるがこの護衛依頼は先週依頼が決まったばかりなのでそれからここまで用意周到に準備はできないだろう。
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