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頭の中でキミと出会う  作者: 目の上にある眉毛
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普通の女子高生の物語


 



私は寝ることがあまり好きではない。それは単に時間がもったいないとか、意識を失うのが怖いわけではない。ましてや目を閉じると嫌なことを考えるからでもない。――――むしろその逆なのだ……。


 


 「「すず、もう授業終わったよ。」」


 そんな声につられて、開きたくない重い瞼を懸命に動かす。視界がかすんではいるが目の前にいる人物にはおおよそ想像がつく。彼女は私の数少ない気が置けない友達である、田坂 歩実(たさか ふみ)。私の交友関係はそこまで広くないから声をかけてくれるのは田坂くらいだ。そんな友人に感謝しつつかすかに口を開ける。


「………もうあと一時間したら起こして。」

「わかった。じゃあ先帰ってるね――」


 落ち着いた声とは裏腹に私の脳は覚醒を余儀なくされる。思っているより時間が経っていることに驚くと同時に、授業を聞いていない自分をひどく情けなく感じる。そういえば昨日もあまり寝られなかったんだっけ…。


「……まって、私も帰る。」

「なら早くしないとおいてくよ」


 その言葉を聞いていつもより少し急いで荷物をまとめると田坂の横に並ぶ。校門を出ると青々と茂った木の葉が私たちを包み込み、少し遅い夏を主張してくる。

 夏は苦手だ。太陽から降り注げられる膨大な力に今の私ではどうすることもできない。あの力に打ち勝てるのはきっとあんな人たちなんだろうな。


「ねえねえ、今日帰りどっか寄っていこうぜ。」

「いいねー。うちは今甘いもの食べたい気分」

「よし!決まりだな、楓も一緒に行こうぜ。」

「うん、わかった…」

 

 視線の先には周りよりひと際目立っている人たちがいる。髪の毛を明るく染め、スカートからは膝が覗き、手や胸元にはおしゃれなアクセサリーが煌々と輝いている。―――いわゆるギャルというものだ。


 その中でもほかの人たちとは異質の空気をまとっている人がいる。モデル顔負けの整った顔立ちに、すらりとした抜群のスタイル――――名前は確か高梨 楓(たかなし かえで)だったと思う。クラスメイトの名前をうろ覚えなのは私の社交性の問題なので許してほしい。

 そんな彼女の表情には感情がなく、常に斜め下を見ながら歩くもんだからさらに彼女に視線が釘付けになる。その醸し出す雰囲気が周りの視線を意図的に操っているのではないかと言われても納得するほど目が離せない。―――むしろそう言われたほうが素直に受け入れられる気さえしてしまうのだから………。

 一目惚れをされる人はきっとあの人みたいなひとなのだろうなとふと思う。まあ私には関係のない話だ。今あの輝きから目を離せないのもきっと目新しさのせいだろう。きっと時間が経てばいつも通りの単色の世界が私を迎えに来てくれる。



 反対に田坂との帰り道はいつも静かだ。お互いによく話すタイプでもなく、共通の趣味を持っているわけでもない。でも私たちの間に気まずさはないと思っている。田坂もきっと同じ気持ちだろう、いやそうであってほしい。そうじゃなきゃこんな私と一緒に帰るなんて好き好んでする人はいないはずだから……


 今日も別れ際に少し話してお互いに別々の方向に歩き出す。入学してからの代わり映えのしない日々にも嫌悪感はなく、いたって()()な毎日が私には宝物のように感じる。


 家に帰るとまずは顔を洗いに洗面所に向かう。学校と言う空間から抜け出すための一種の儀式のようなものだがそんなに深い理由はない。たまたま習慣化したから続けているだけで理由なんてただの後付けにすぎない。


 洗面所の窓を覗くとそこには量産型の女子高生がいた。とりわけ可愛いわけでもスタイルがいいわけでも裕福なわけでもない。これといった人様に自慢できるような特技もない。ただの()()の高校生だ。

 なぜ私がここまで普通にこだわるのか。それは私の過去に答えがある……。



 私は小学四年生のとき、初めて女の子を好きになった。もちろん恋愛的な意味である。これを自覚したとき私はまだ幼かったこともあり、違和感は何もなかった。むしろ女の子を好きになれることをうれしく思ったほどだ。


 しかし、その考えは中学生の時にがらりと変わった。


 それはある日特別授業と題して開かれた「LGBTを知ろう」での出来事である。その時私にはLGBTという単語は初耳であり、気だるげに窓の外の見ながら片耳だけで先生の声を聞いていた。

 窓の外からは校庭に生えている一本の桜の木が見えた。少しずつ暑くなりだした今日ではもう咲いてないかもと思ったが、目を凝らしてみると数多の枯れ落ちた枝がある片隅で、美しい花びらが咲いている一本の枝があった。なんとも特別なもののように見えてひどくうれしかった。


 そして授業も中ごろに差し掛かった頃、私は先生の一言で桜から意識を強引に奪われた。


「LGBTというのは様々な種類があります。男の子が男の子のことを好きになったり、反対に女の子が女の子のことを好きになったり、他にも………。」


 最初は先生が何を言っているのか全くもって理解できなかった。あまり集中して聞いていなかったから―――なんて都合のいいものだったら良かったのに………。

 しかしそんな私の意志とは裏腹に、着実に先生の言葉は枯れ葉のように私の胸に降り積もっていった。もちろん先生がそんな様子に気づくわけもなく、真剣なのかもよくわからない声色で話し続ける。


「………このような人たちがいることをまずは知り、そして理解できるようになりましょう。」


 その声とともにこの授業に終わりを告げるチャイムが流れる。友達のもとに駆け寄り明日になれば忘れるような会話にいそしむ人もいれば、すぐに荷物をまとめ帰りたそうにしている人もいる。


 私もどうにも表せないこの感情の根源となっているこの場所から一刻を早く逃げ出したくて席を立とうとするもうまく足に力が入らない。


 あとほんの少しで私の中の何か大切なものが崩れてしまう。そんなことはわかりきっているはずなのにどうにも動けない。 


 私の気づかないうちに枯れ葉は胸を埋め尽くしてしまっていたのだ…………


 

素人による作品なのでお見苦しい点があると思いますが、読んでくださりありがとうございます。

今後の参考にさせていただきたいので気軽にコメントしてくださるとうれしいです

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