第1章 別れ
「今までありがとうございました。」
耳に入ってから理解するまでにかなりの時間がかかった。ああ、もう終わったんだ、これでもう…。気づいた時には涙が溢れていた。
「もう別れたい。」
こう切り出したのは私の方からだ。大学生になって初めて付き合った彼に3度浮気され別れ、その次に付き合った年下の彼氏は夜の相性も生活リズムも合わず、3ヶ月で別れた。金輪際男なんかと付き合うものかと腹を括っていたところに声をかけてきたのが、現在別れ話をしている彼だ。付き合う回数は割と多いくせにろくな男性と付き合えた経験がない。俗に言う「クズ男」を引き寄せてしまうのである。
現在別れ話をしている彼(以後、善と称す)は、決してクズなんかではない。私の話を親身に聞いてくれるし、落ち込んだ時は励ましの言葉をくれる、とても思いやりのある男性だ。しかし、善には私にとって嫌な一面があった。それは、何かある度すぐ弱気になるところ、勝手に甘えればいいのに「甘えていい?」とわざわざ許可を得てくるところ、そして自分の甘えている姿を可愛いと思っているところだ。
「……俺は別れたくない。」
「でもこのまま一緒にいても傷つけるだけだから。」
諭すように告げた。実際、彼の嫌な部分が見え始めてから、冷めていくのに時間はかからなかった。しばらくしたら嫌な部分も受け入れられるだろうから、しばらく我慢しようと思い、頑張ってみた。でも無理だった。嫌な部分が見える度私は嫌悪感を抱き、メッセージも頻繁に送り合っていたが、いつしか返信が来なくなることを願っていた。そんな自分に対して腹を立てていたし、気づいたら自分のことが嫌いになっていた。結果、3ヶ月ともたなかった。
「別れたところですぐ他の男と付き合おうなんて思わないし、今は仕事に専念したいから。」
仕事に専念したい、だから他の男となんて考えない。この言葉でなんとか了解してくれた。そして私は、善との出来事を境に、恋愛ができなくなった。大学4年生の夏だった。
初めまして、すいと申します。
まずは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
趣味程度で書かせていただいていますので、誤字脱字や表現のクオリティーにはご容赦ください。
また、私小説として執筆させていただいておりますが、一部内容を変更してお送りさせていただいております。
各章かなり短いので読みやすいかと思います。
よろしくお願いいたします。