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冒険者への一歩~遭遇

初投稿です。



拙い文章ですが、よろしくお願いします。

 神々の力が宿る神具(アーティファクト)。ヘルトライゼ大陸の各地に遺跡を形成し眠っているその存在は、水をどこからともなく生み出す簡単な物から、国一つを簡単に滅ぼす代物まで存在している。

 神具はそれぞれ摩訶不思議な空間を作り出すことができ、そこを攻略して最初に手にした者に神具は恩恵を与えてくれる。多くの人間は一攫千金を求めて旅をしており、その者たちを冒険者と呼ばれている。








「俺、年上の女性冒険者が好みなので、結婚はできません」


『ええええええええええええええっ!!!!?』


 周囲の驚く声が室内に響き渡る。若者が発したその言葉があんまりな理由だったため、度肝を抜かれていた。

 というよりも周囲の者たちからすれば断ってほしいとは思っていた。若者に勧められた結婚相手は周りからすればぜひ自分の息子に! という気持ちが強かったからである。

 しかし、それでも彼らは一人の人物に視線を向けなくてはならない。もっとも高い位置にある煌びやかな椅子に座るその人物に。


「……我が娘では不満か?」


「いいえ、とても美しい方であると思います。しかし、自分の結婚相手は自分で見つけたいと思っております。あと、年下であるのがちょっと……」


(余計なことを言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


 周囲の者たちは冷や汗が止まらない。若者が何か言うたびに恐ろしさが増していく。

 これが、町長の娘との結婚程度ならば何の問題もなかったかもしれない。しかし、この場所ではそうはいかない。若者が断りを入れている相手はヘルトライゼ大陸に存在する国の一つ、ウーティラス王国の頂点である国王なのだから。


「貴様ァ……真っ二つに切り裂いてやる!」


「へ、陛下! お止めください!!!」


 すぐそばに置いてあった剣を手に取り立ち上がる国王。それをすぐさま周囲の家臣たちが止める。


「離せ宰相! 年下だからとかふざけた理由で断るなど! 娘はあの男に執着してしまったのだぞ!! 奴を追いかけて冒険者になるなどと言いだしたらどうする!!」


「いや、俺にも結婚相手を選ぶ権利はあると思うんですけど」


「冒険者ラウル! それ以上陛下を怒らせるようなことを言うなああああああ!」


 若者の名はラウル。少しばかり活躍してしまった冒険者であった。

 なぜこのようなことが起きたのか、少しばかり時を遡る必要がある。








 ラウルは村の決まりによって成人を迎えた18の若者だ。彼は昔から大陸中を見て回ることが夢だと周囲に話しており、ようやくその一歩を迎えるところであった。


「ようやくこの日が迎えられたね。ラウル」


 家の前で一人の女性がラウルに声をかける。まだ太陽がうっすらと見え始めた時間で、周囲は薄暗い。


「うん。成人を迎えるまでは己を鍛える時間に充てる。そう母さんと約束したから」


「まさかアタシと同じ冒険者になりたいなんて言い出した時はどうしようかと思ったけど、まぁアタシの息子というだけはあるね」


 ラウルの母エルザは過去に冒険者として名を馳せていた人物であった。有名になったのは実力はもちろんのこと、女性である。という部分も影響している。

 冒険者は男の職業という人たちが少なからずおり、女性というだけで馬鹿にされてしまうことがあった。そこへエルザは現れ、誰ともパーティを組まずに神具が眠ると言われている遺跡を攻略。引退するまでに一つ手に入れば安泰の神具を五つ手に入れた彼女は冒険者の中では有名であり、女性が冒険者を目指し始めるきっかけを作ったといわれている。

 その後一目惚れした男性と結婚、ラウルを生む。


「お守りとしてアタシの神具を分けてやりたいんだけど」


「最初に手に取った人が命尽きるまで他の人が手にすることはできない。でしょ?」


「おまけに神具はどこかに消えてまた遺跡を作るってんだから面倒だねぇ」


「けど、いつまでも母さんに甘えられないよ。俺は俺なりの冒険者を目指すよ(ついでにもう一つの夢もね)」


「アタシの息子なんだ。それぐらいはしてもらわないとねぇ…………行ってきな」


「うん。行ってきます」


 エルザはラウルをやさしく抱きしめる。自身と同じ灰色の髪を撫でると少しだけ身動きしたが、その後はされるがままであった。

 最後の甘えた数秒間を終えた母と子は笑顔で別れる。ラウルは一度も振り返らずに走って村を後にした。


「……ラウルは行ったのかい?」


 家からエルザの夫でラウルの父であるベルグがゆっくりと現れる。


「なんだい起きていたなら見送ればよかったじゃないか」


「いや、それだと息子を足止めしてしまいそうな気がしてね」


「いつまでも子供じゃないさ」


「僕たちからすればいつまでも息子さ」


「確かに。じゃあ……ラウルがいない寂しさを埋めるとするかい?」


「え?」


「次は娘がいいかねぇ」


「お、お手柔らかに……」


 夫婦は家の中へと入っていった。ラウルが帰ってきたら兄妹が出来ていて驚くことだろう。






 ラウルが住んでいた村はウーティラス王国とベルラス公国の国境付近にある。税を納めているのは公国側であるため、まず最初は公国の首都に向かうのが妥当ではあるのだが、ラウルは最初の冒険はウーティラスの首都に現れた神具遺跡に行ってみたいと考えていたため、王国の首都メルトトへ通ずる道を歩いていた。

 本来ならば村から馬を利用して六日ほどの道のりだが、ラウルは歩いている。せっかく冒険者になるのだから色々見て歩きたい。そう考えてのことであるが、道中に一切の危険はない。と断定することはできない。

 人里離れた場所などには凶暴な獣が出る場合もある。加えて商売人を狙った盗賊が現れる可能性も考えなくてはならない。さらに、ウーティラス王国は現在領土拡大を掲げて周辺国との軋轢を生んでいるダングール帝国と一発触発の状態になりつつあり、開戦は近いと考える人も多い。


 ラウルが王国の状況をあまり知らないということもあるが、冒険者という職業は基本的に冒険をする仕事であり、傭兵とは違う。もちろん金を積まれれば戦争に加担することもあるだろうが、そういう者はフリーの冒険者だ。

 冒険者とは言ってしまえばその時点から冒険者である。しかしフリーのまま活動する者たちは、金さえ払えばどんなこともするスタンスを取る者たちが多く問題になる。そのためラウルの母エルザが活躍を始めたころから冒険者は大陸中に支部を置くギルドと呼ばれる場所にて登録をすることが大陸全土で推奨された。遺跡から持ち帰った素材などをギルドの職員が換金してくれる。フリーの場合は自分で各店舗に売りに行く必要があり手間がかかる。その他にも住居を併設しているため登録していれば部屋を借りることが可能であったり、遺跡内に現れる敵の情報なども随時教えて貰えるなどの恩恵があるため、滅多なことがない限り冒険者はギルドに登録する。


「おお、イエローアップルが自然に実ってる珍しい。ここで昔は栽培していた名残かな? いや、土がいいために自然と? うーん興味深い」


 村から馬車でも六日かかるというのに、徒歩のラウルは立ち止まっては観察。を繰り返しており、首都に到着するのは一か月になるのではないかというくらいに遅い。


「お、ここは……」


 十日が経過したラウルは三叉路に到着。母エルザから貰った地図を開いて場所を確認する。


「北に行けばウーティラスで、南はカララント連合王国か。よしよし順調だな」


 地図をしまい北へと歩を進めるラウル。当然足取りは遅い。

 しばらく歩いていると後方から多数の重なった音が聞こえてきた。


「…………軍馬か?」


 道を開けてやり過ごそうかと考えたが、先頭を走っている馬車とその周囲にいる者たちでは違いがあることに気が付いたラウルは考えを変えた。


「馬車はウーティラスの紋章があるが、周りの奴らが着ている鎧はカララントの物……狙われているのか」


 母からの教育の賜物というべき知識ですぐさま気が付いたラウルは常備していた手ごろな石を革袋から取り出す。


「石の神リグルフェンの加護ぞあれ……」


 そう呟いたラウルは馬車の方へと走り出す。



 一方で逃げている馬車に乗るウーティラスの人間からすれば驚きでしかない。本来ならば通り抜けるまで隠れて過ごすべきだ。下手をすれば自身も身の危険に晒されるのだから。しかし、馬車の屋根にて槍を振るいながら敵の攻撃を防ぐウーティラス王国近衛騎士団所属のエリクは唖然とした。


「シッ!」


 灰色の髪をした若者――ラウルが手に持っていた石を馬車に近づいていた数頭の馬の眼球へと投げ込んだのだ。


「――――ッ!!」


 突如訪れた眼球の痛みに馬たちは暴れてしまう。不意のことで馬上の者たちは対処できず、振り落とされてしまう。振り落とされた者にぶつかって前のめりに転倒する馬も現れ、被害が広がっていく。


「………………」


 突然のことで呆然としてしまうエリクであったが、馬車の側面にラウルがいることに気が付く。そして屋根の上に移動しようとした際に目が合う。


「お、お前……今の」


「あ、どうも。困っているようだったので余計かと思ったんですけど手伝いますよ。丁度ウーティラスに行く予定でしたし」


「そうか。いや、助かったよ。…………じゃなくてだな!」


「エリク! 無駄話をしている場合ではない。敵はまだいるんだぞ!」


 声を荒げながら馬車の屋根にもう一人に人物がやってくる。鎧を纏い長い金髪を後ろで束ねた女性であった。背には弓と矢を抱えている。


「分かっているアネッサ! ただ、この男が予想外の行動をだな……」


「その話はあとで聞く! 今は残りの奴らを対処するぞ」


「おお!」


 二人の騎士は残りの敵に対処するべく武器を振るった。ラウルも数のある限り石を投げ込む。


「て、お前剣は使わないのか!?」


 エリクはラウルの腰にある布に包まれた物を剣と見ており、それを使うものと思っていたのだが、革袋から石を取り出して投げるばかりで、使う様子が見られなかった。


「少々訳ありでして、まぁリーチ差がありますし、こういう時は石投げた方がいいでしょう? リグルフェンにお祈りしましたし」


「祈ればいいって問題か!?」


「エリクゥ! 口をより手を動かせ!!」


「わかってるよ! このっ!」


 しばらく間三人で襲い掛かる敵の相手をしていると、攻撃を仕掛けてこなくなり、道を外れ森の中へと姿を消した。

 しばらくして馬車は速度を落とし、安全を確認したのちに停止した。


「深追いは禁物……だな」


「ああ、今は無事であることを喜ぼう」


 女性騎士アネッサは屋根から降りると馬車の扉を開いて中に声をかける。


「姫様、ご不安を招いて申し訳ありません。安全の確認ができました」


「そう……もう外へ出てもいいのかしら? 息が詰まってしまいそう……」


「ええ、構いません。お手を」


 馬車の中から現れた小柄な手を優しく掴んだアネッサはゆっくりと馬車から一人の少女を降ろす。気品に溢れた佇まいと美しい金色の髪が太陽の光でキラキラ輝いている。身にまとう服装も少女の美しさを損なうことのない派手すぎないドレスを着ていた。


「アネッサ、貴女が無事で良かった。エリク貴方も」


「勿体ないお言葉です」


「はっ……」


「カルロ、よく手綱を離さずにいてくれました。お城に戻るまでどうかよろしくね」


「ははっ!!」


「そして、貴方様は……?」


「ラウルと申します。ここより南西の村より参りました」


「では公国の国境近くにある村のことですね? そこから歩いて?」


「はい」


「まぁ、すごい! 馬を使っても何日もかかりますのよ? それを歩いてだなんて並大抵のことではできませんわ。あ、申し遅れました。私はウーティラス王国のエレディアーナ・ロフェイロンと申します。エレンとでもお呼びください」


「エレディアーナ様。それはいけません」


「けど、セリーナ。この方は命の恩人ですよ?」


 エレディアーナを注意したのは馬車から降りてきたメイドであった。いわゆる専属侍女である。


「そう思わせて油断させるためかもしれません。この状況で見ず知らずの者を信用するのはお命に係わります」


「セリーナは固すぎます。ラウル様は良い方だわ」


「エレディアーナ様、そちらの方の言う通りです。恩人だからといえ安易な信用は危険ですよ?」


 ラウル自身もこの状況においては安易な信用は危険だと思っている。そもそも母からの厳しい特訓がなければ石を投げながら走る馬車に掴まるという芸当ができなかっただろうと思っているからだ。


「やっぱりラウル様はお優しいですね」


「エレディアーナ様……」


 ラウルの言葉を受けても笑顔を向けるエレディアーナにセリーナはため息を小さく吐き出す。


「んでラウルよ、なんで馬を使わずに歩いてたんだ? まぁ、大方冒険者になるためとかだろけどよ」


 話を変えようと割り込んできたエリクが疑問を投げかける。


「さすが、よくわかりましたね」


「え、本当に冒険者になる為か? だって、今の話を聞く限り、公国の方が近いんだろ? ウーティラスに来る必要ないだろう?」


「ま、気分です。色々と見ながら歩きたかったので」


「…………途中に村はなかったはずだから、野宿をしながら来たのか?」


「もちろん。ああ、身なりが綺麗で臭いがしないことを疑問に思いました? それならこれが理由ですよ」


 ラウルは革袋から手のひらに乗る水晶を二つ取り出した。水晶の中で火が灯っている物、水が渦巻いている物があり、それを見たエリクたちは納得した表情を見せる。


「魔水晶の火と水か。なるほどそれで汚れを抑えていたわけだ」


「ええ、母が身だしなみには気を付けるよう言っていましたので」


「素敵なお母さまですね。けれど、魔水晶を渡せるということは、以前は冒険者ギルドの関係者だったのでしょうか?」


 魔法を使える石と呼ばれる魔水晶は神々が残した産物とされる。ラウルが祈りを捧げていた石の神リグルフェンが特に関わっていると言われており、多くの魔法使いたちが信仰する神でもある。

 とはいえそのような物が簡単に出回っていいわけではない。基本は冒険者ギルドが管理している。以前は国でも管理していたが、戦争が多発した時代に道具として使われてからは厳しく管理され、今では冒険者の必須道具とも呼ばれている。


「いえ、母は冒険者でした。エルザと言いまして、その時使っていた物を貰いました」


「エルザ!? 今、エルザと言ったか!?」


 今まで離れた場所で周辺の警戒をしていたアネッサが話に割り込んできた。


「ええ、ご存じで?」


「知らないわけがないだろう! 女が冒険者を目指す大きなきっかけを与えてくださった方と言われることが多いだろうが、騎士を目指す女が増えたのもエルザ殿のおかげなのだぞ!」


 アネッサはエルザが活躍してくれたことで、騎士を志していた夢を諦めなくてすんだと熱弁。ラウルはその興奮具合にたじろいでしまう。


「ご歓談中失礼。エレディアーナ様、後方より隊長たちのお姿が」


 アネッサと共に馬の様子を見ながら周辺の警戒をしていたカルロが声をかける。


「まぁ、良かった! リグソン隊長はご無事なのね」


「隊長? 殿をしていたんですか?」


「ああ、そもそも俺たちはカララント連合王国に居られるエレディアーナ様のご友人に会いに行ったのさ、ちょっとばかり体調を崩されたとかでな。それで陛下から許しを得て近衛騎士五番隊の俺たちが警護を任されたってわけ。後は帰るだけって時に限ってカララントの鎧を着た連中に襲われたんだ」


「その隊長が我々を逃がして殿をな。弓を使う者たちがいた為そいつらから倒すために殿に人を割いてしまったがな」


 エリク、アネッサがラウルと出会うまでのことを簡単に語る。


「なるほど、だから馬車を狙う連中の中に弓を使う奴がいなかったんですね。効率の悪い戦いをしているなぁと思っていましたけど」


「ああ、おそらく隊長が弓兵だけは追手に加えさせないように指揮をしてくださったのだろう」


 後方からやってきた一団は徐々に減速していき、エレディアーナの近くで停止。先頭に立つ二人の男は馬から降りると彼女の前で跪く。


「エレディアーナ王女殿下ご無事で何よりです」


「リグソン隊長。貴方と五番隊の騎士たちが私を守ってくださいました。心より感謝を」


「勿体なきお言葉」


「それで、襲ってきた者たちは間違いなくカララントの?」


「いえ、どうやらダングール帝国の工作兵のようです。副隊長が持つ神具を使い得た情報ですので確かなものです」


「なるほど、カララントとの関係が悪化するようなことを避けることが出来てまずは喜ぶべきですね。アレクセイ副隊長、ありがとうございます」


「お役に立てたのであれば光栄です」


 エレディアーナが感謝の言葉を述べている間にこっそりとラウルはエリクに耳打ちする。


「あのアレクセイという人は神具を?」


「ああ、数年前まで冒険者だったんだが、記憶の神テポロクの物と思われる神具を手に入れてな。リグソン隊長が熱心に勧誘したのさ。何せ副隊長が持つ短剣に刺されると、すべての記憶を見られちまう。情報を得るという点では間違いなく優れものだろ?」


「エリク、協力してくれた方とはいえ、そこまでペラペラと話していいわけではないぞ?」


「た、隊長! 申し訳ありません。それと、ご無事でなによりです!」


 リグソンが近づくとエリクは敬礼をして背筋を伸ばす。


「運が味方してくれたようでね、味方の犠牲者は出ずに済んだ。まぁ数名負傷はしたがな。……それで彼が道を歩いている途中逃げている馬車を見て協力してくれた?」


「はい、石を的確に敵の眼などに当てておりまして」


「ほう、石を……見たところ剣を持っているが?」


「母から必要な時以外は剣を振るうなと言われておりまして」


「ふむ……申し訳ないが、アレクセイに記憶を覗かせても? 信用していないわけではないだが、このようなことが起きた後なのでな」


「構いません」


「感謝する。アレクセイ! こっちに来てくれ!」


 リグソンはやって来たアレクセイに事情を話す。頷くとラウルが差し出した腕に短剣を軽く差す。


「…………問題ありません。彼は間違いなく善意で味方してくれた者です」


「そうか、すまんなラウル殿」


「いえ、状況が状況でしたので」


「そう言ってくれるとありがたい。王国に行くのだろう? これも何かの縁だ共に行こうか」


「では、お言葉に甘えて」


「でしたらラウル様、私の馬車に乗ってくださいな」


「エレディアーナ様……」


「良いではありませんかセリーナ。副隊長のお墨付きですよ?」


「殿方を馬車に招く行為はあまり褒められたことではありません」


「セリーナったら……じゃあ、私はラウル様と歩きますわ」


「なっ!? それはいけません!!」


「いいじゃない。服は汚れる物よ? 靴だってそう。問題ないわ」


「そういうことでは……」


「じゃあ馬車に乗りましょうラウル様も」


「………………むう」


「失礼、ラウル殿」


 エレディアーナとセリーナのやり取りを聞いていると、アレクセイが話しかけてきた。


「記憶を覗かせてもらった際に見たのだが、あの山は今も……」


「ああ、お恥ずかしいことに今もです。それもあって剣はいざというときのみと母に言われています」


「冒険者エルザ殿か、現役のころの彼女の伝説的な話は今でも聞く。私の尊敬する人物の一人だ」


「ありがとうございます」


「ラウル様ー! セリーナの許しが出ましたので馬車へどうぞ!」


「さ、殿下を待たせるわけにはいかない行ってくれ」


「ええ、時間があれば冒険者の頃の話を聞かせてください」


「ああ、そのうち必ず」


 ラウルはエレディアーナの馬車に乗り込み、ウーティラス王国へと向かう。




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