大きな靴下
「ジングルベール、ジングルベール……。」肩を竦ませながら、マフラーの中で口ずさんだ。十二月二十四日、クリスマスイブの街を往く通行人は、いつもよりカップルや子供連れのファミリーの姿が目立っていた。多くの子供の手には大きな靴下が提げられていて、その瞳は期待と希望で煌めいていた。それはまるでイルミネーションのようだ。「サンタさん、今年は何をくれるかなぁ?」擦れ違った男の子は両脇を挟む両親へ無邪気に訊いた。親同士は楽しそうに顔を合わせて笑うと、きっと良い物をくれる、と頭を撫でていた。その親子の会話に苦笑を零した僕は「大人」の仲間なのだろう。大きな靴下か……、と心の中で呟いて、子供の手をふと見た。彼等にしては最早覆面にもなるほど大きな代物。少々収納に困りそう。「大きな靴下だから、たくさんプレゼントが入るね!」もう君のそれの中にはたくさんの物が入っているじゃないか、とは言わなかったが、僕の足は、無駄に大きな靴下を求め歩き始めていた。
希望に満ちた瞳、それはまるでイルミネーションのようで。
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