除菌できる絆創膏
「痛ッ──。」アスファルトで転ぶと、勢いがどうであろうと関係無く怪我をする。それも意外に深い傷だ。「珍しいな、貴方が転ぶとは。」そう彼女から差し出された一枚の絆創膏。テレビは余り見ていなかったが、コマーシャルで話題の物だとは聞いていた。「それが噂の『除菌できる絆創膏』かい?」それを手に取りまじまじと観察した。「ああ、エタノール等が含まれている。大抵の有害物質は分解可能だ。」科学の発達により生活が便利になった一方、研究所の乱立や工場地帯の増加に因り、菌であったり人体にとって有害な金属類であったりが世に増えてしまった。それ等が傷口に付着すると膿化したり、体内に回って最悪死亡する件もあったため、世間では、どうしたものか、と悩まれていた。そこで登場したのが除菌できる絆創膏である。効果はあるのか、と問うと、確実ではある、と返ってきた。「……僕はいい、少し公園に寄る。」僕にはそれが、死なないと確実性のある拷問と同等に感じてしまった。
痛みを伴わう安定、痛みを伴わぬ危険。
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