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ドリーマー・夢結社第2回 Kはカプセルホテルで目覚める。名前以外は記録がない。ポケットにはチバーポートタワーの半券が入っている。

ドリーマー・夢結社 第2回


(1987年)星群発表作品●夢王たちの饗宴パート2です。


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所


http://www.yamada-kikaku.com/






何本もの私鉄とJRが数多くの人間をそれこそ物のようにつみこんできては吐きだす町、渋谷。


昔から有名な待ち合わせ場所、渋谷駅忠犬(チ公銅像前。


 その前にいた一人の男が二人組に呼びかけられる。


「もしもし」


 呼びかけられた男の眼はぼんやりとしている。


二人がかりでその男は路上に押したおされた。突然の出来事だ。




待ち合わせをしていた男女は何事かとまわりから逃げ出す。


二人の男は、男の眼の中を内視鏡で調べている。男の網膜には血管がなかった。


押えつけていた男がすばやくヒ″プホルスターから銃をとり出し、ためらわずに頭を射つ。銃声は


一帯に響く。


二人の男は、まわりに集まってきた群衆にIDカードをかかげて見せる。


「心配するな。我々は、それこの通りドリーマーハンターだ」


もう一人もつけ加える。


「そうだ。こいつはドリーマーだったのだ」


群衆の目の前で射たれた男の体はゆっくりと消えていく。路上には跡形もない。






まわりで見ていた群衆の一人がかたわらの友人に言った。


「ああ。恐ろしい世の中だね」


「ドリーマーに、ドリーマーハンター。それに家に帰りや、ドリームチャイルドにドリームドールとくるからなあ」


「が、しかし、まあ、一面なかなか世の中がおもしろくもあるな」


「うん、それはいえるなあ」


二人は互いにうなづく。


二人のサラリーマソは家路を急ぐかわりに今の話をサカナに居酒屋ののれんをくぐろうとする。




■電話が鳴っている。男が受話器を取る。


「はい」


「ドリーマー・ハンターかね」


 くぐもった声が伝わってくる。




「違いますよ」


 いささかとまどった声だ。


「そちらがドリーマー・ハンターのセンターという事はわかっている」




「あなた、何か間違いを……」


「いいんだ。だまって聞け、今日、そこヘドリーマーが訪ねる」


 押しかぶせるように声はいう。




「何を言っているんだ。ドリーマーだって」


「それだけだ」


「待て、君は誰だ」


「それはいい、君達の協力者だと思ってくれ」




 電話は切れた。受話器をもとに戻しながら男は側にいたチーフに声をかけた。


「お聞きの通りです。ここヘドリーマーが訪ねてきます」


「ガセネタかもしれん。が、一応準備はしておこう」




「わかりました」




同じ頃、電話をかけた男が、代々木の公衆電話ボ″クスから出てきた。


駐車している車に向かって言う。


「あれでよかったのでしょうか、長官」


「よくやってくれた。ありがとう」




 長官と呼ばれた男は。感謝の言葉と同時に鉛の弾を彼の心臓に与えた。


「うっ」


 男は車にもたれかかりながら倒れる。消音銃だ。長官と呼ばれた男は無表情にいう。


「さあ、始まりだな」






 ■ねむい。Kはそう思った。


 悪い寝ざめだ。


 最初に目に入ってきたのは、ホワイトクリームの天井だった。


棺桶の中? 違うようだ。天井がかな


り低い。起きあがると天井に頭を打ちそうになる。目の前40センチくらいの所にテレビがあった。


 ここはどこなのだ。足の方にカーテンがある。


どうやらカーテンの向こうが出口の様だ。Kは這いでた。


 Kは立ちあがって自分が今までどこに眠っていたのか確かめてみる。


 そこは、警察の死体収納ボックスを思わせた。繭棚の様でもある。


 2段のベッドがずっと続いている。不思議なほど静かだった。


 Kは思い出した。どうやら俺は「カプセルホテル」に泊ったらしい。


洗面所とトイレを通りすぎて、


階段をあがる。上のフロアには大きなサウナブロがあった。


 ところで俺は誰なんだ。Kは思う。




■名前はK。それ以外、俺はまったく思い出せない。俺はいったい何者だ。


 タオル地の寝着を着ている。


 ポケ。卜をさぐってみる。が、証拠になるものは何も入っていない。


 右の手首にナンバー入りのキーがゴムバンドでぶら下がっている。キーはどうやらロッカーのものら


しい。ロッカーはサウナブロから一階下ったところにかたまって並んでいる。




フロントの横のロッカーで同じナンバーをさがす。


 開けてみる。中に入っているのは服だけだ。エルメスの財布。財布には125万円程入っていた。


 他には小銭入れ。免許の類はまったくない。名刺入れも、定期券もない。


 腕時計はわりといい。ホイヤーのダイバータイプだ。服の中をいろいろさぐっているので、


隣りの男が不思議そうな顔をしていた。


さてこれからどうするかだ。とにかく。この「カプセルホテル」から出てみょう。




地階がフロントになっている。


エレベーターの横に喫茶店があり、そこから外へ出られる。


ところで外はどこだろう。住所表示を探して読みとる。


新宿の歌舞伎町の様だ。もう昼近かったが、あたりはまだ昨夜の活動のなごりが残っている。


もう一度、服をあらためてみる。ジャケ″卜はJ・プレスのブルーのジャケット。スラックスも灰色


の普通のもの。ジャケットのアウトポケットから紙切れが出てきた。


ひろげてみる。チバ・ポートタワーの半券だった。




チバ・ポートタワーだって?




ドリーマー・夢結社第2回


(1987年)星群発表作品


作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所


http://www.yamada-kikaku.com/



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