姫様とベルナール家
「ああ、君かアミークラ。」
ロイドが扉の前に立っている女性に言う。ルードがアミークラと呼ばれた女性に一礼して部屋を出ていく。代わりにこちらにやってくるアミークラ。
「紹介しよう。エマの護衛を引き受けて下さった方達だ。」
「まあ、それは良かった。はじめまして、私アミークラと申します。」
「ナーシャです。」
「プリシアです!」
「グレンだ。」
「ヴォルフと申します。」
「アミークラは住み込みで私の秘書をしてくれているんですよ。」
「ロイド様、私はしがない占い師ですわ。秘書だなんて畏れ多い。」
「占い師?」
「ええ、そうなんですよ。アミークラの言うとおりにしていたらどんどん事が上手く運びましてね。それで、秘書として雇ったんですよ。」
「皆さん、エマちゃんの事お願いしますね。」
アミークラが柔和に微笑みながら言う。
「皆さんには選挙が終わるまで住み込みで護衛をお願いしたんだ。短い間だが君もよろしく頼むよ。」
「かしこまりました。でもロイド様……。」
「ん?どうした?」
「そういう大事な事は私に相談してから決めて頂きたかったですわ。」
ロイドが慌てて言い訳する。
「す、すまない!如何せん急な事だったもので。君を蔑ろにしたわけではないんだ!すまない!」
「次から気をつけて下されば大丈夫ですわ。」
「ああ、勿論だ!」
二人の奇妙な関係性を見せられて所在無げにしているアナスタシア達に気づいたロイドが取り繕う。
「で、では皆さん!宜しくお願いします。部屋の準備ができたらルードが呼びに来ますのでもう少しこちらで寛いでいて下さい。」
そういうとロイドとアミークラは連れだって部屋を出ていった。
「ふぅ……しばらくはここで暮らすことになるのか。」
アナスタシアがボフッとソファに座り呟く。
「明日の朝に宿へ荷物を取りにいかないといけませんね。」
「護衛ねぇ……あいつらまた何か仕掛けてくると思うか?」
「どうかな。ただ人殺しも辞さない連中だ。何があっても不思議じゃないさ。」
「ふむ。そうですな。何もなければそれに越した事はありません。」
「タダ飯喰らいになるけどな。」
四人が明日からの事を話しているとルードがやって来た。
「お待たせ致しました。お部屋の準備が出来ました。」
ルードに先導されながら、部屋へ向かう途中に屋敷の中を案内してもらうアナスタシア達。四人の寝泊まりする部屋は二階にあり、ルードの部屋も同じ階にある。ロイドやエマ、アミークラの部屋は三階だ。
「エマさんに挨拶してもいいですか?」
プリシアがルードに尋ねる。
「申し訳ありません。お嬢様は疲れて眠ってしまわれました。明日また機会を設けさせて頂きますので御容赦を。」
「そうですか……。」
自室へと案内された四人はその日はもう休む事にした。
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