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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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Interlude

館の一室。豪奢な家具が並ぶ部屋の窓際に男が立っている。見下ろす風景は閑静な住宅街。今は夜の帳が降りて家々から暖色の灯りが漏れている。さながら暗闇にランプを並べたようだ。


「…………。」


男が振り向くと扉が開いた。部屋に入ってきた別の男が開口一番言う。


「すまない……しくじった。」


元々部屋にいた男は特に顔色を変えずに言った。


「そうか。別の手段を考えよう。」

「リドリーは?」


後から来た男が尋ねる。


「アラミス氏の外出に同行している。間も無く帰るだろう。」

「そうか、報告したいことがある。」

「ん?」

「リドリーが戻ったら話す。」

「わかった。待つとしよう。」


男達はソファに腰掛け仲間の帰還を待つことにした。そのまま特に話す事もなく一時間程待っていると、表から馬車の走る音が聴こえてきた。次いで門を開ける音。人の話し声が聴こえる。どうやら待ち人が帰ってきたようだ。しばらくすると部屋の扉が開いた。


「戻ったぜ。やれやれ、会食っての肩が凝るな。」


背広を着た男が入ってきた。この男がリドリーだろう。


「ご苦労だったな。」 

「報告、特に変わった事はなかったぜ。」

「わかった。」

「ナッシュ、そっちは?」

「すまない、しくじった。」


ナッシュと呼ばれた男が先程と同じように己の失態を詫びる。


「あらら。」


リドリーが特に責めるわけでもなくソファに座った。


「ナッシュ、話しを。」


最初にいた男がナッシュに話を促す。ナッシュが頷き話し始める。


「昼過ぎにベルナール家の娘が御者と二人で外出したので指示通り追跡した。用件は商業区への買い物と居住区の友人に会いに行く事だったんだが……まあ、これはどうでもいいか。」


仲間達が話しに聞き入る。


「周囲に人がいなかったから友人邸を出て馬車に乗り込む時に計画に移ったんだが、御者に気づかれた。」

「ほぅ。」


リドリーが僅かに反応する。


「御者は"本当に現れた"って言っていた。」

「計画がバレてた……いや、"本当に"ってことは予測していた程度か。」


リドリーの推察にナッシュが頷く。


「馬車は娘を乗せて走り出した。追跡事態は容易だったんで二つ角を曲がった人気の無かった路地で御者を殺って娘を捕らえたんだが……娘に声を出された。」


ナッシュが悔やむように言う。


「声を聞き付けて男と女が走ってきた。娘を気絶させて連れ去ろうとしたんだが……その二人、特に男の方が速くてな。追跡を振り切れなかった。」


リドリーが口笛を吹く。


「あんたが振り切れないとはね。」

「身のこなしから見るにかなりの使い手だと感じた。」

「向こうも腕の立つ護衛をつけたのか……。」

「いや、やつらの反応を見るに偶々通りかかった感じだった。そういう訳で娘の捕縛を諦めてその場を去った。」

「なるほどね。どうするんだガトー?」


リドリーが最初に部屋にいた男、ガトーに尋ねる。ガトーはじっとナッシュの話を聞いていた。


「すまないガトー。俺の失態だ。落とし前はつける。」


ナッシュの言葉に首を振るガトー。


「どんなに備えても不測の事態はつきまとう。他の方法を考えよう。」


もとよりガトーにナッシュを責めるつもりはない。そもそも、ベルナール家の娘を丁重に扱えとナッシュに言っていたのはガトーなのだ。


「アラミス氏に報告だ。」


三人は立ち上がり部屋を出ていった。












御一読頂き誠にありがとうございました。

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