姫様の予定
早朝に宿を出たアナスタシア達は馬車に丸一日揺られて首都マイルを目指す。
第一便だった為アナスタシア達以外に乗客はなく途中休憩を何度か挟みながらも日が完全に沈んだ頃には目的地に到着することができた。
「着いた~。」
首を左右に傾げ、肩をグルグル回しながらアナスタシアが言う。
「どうもありがとうございました。」
プリシアが礼を言うと、御者は片手を挙げてニッコリ笑い去っていった。
「で……大丈夫か?」
「グレンさん……。」
「意外な弱点じゃな。」
「…………。」
グレンはゲッソリした顔をしながら壁に手をついている。
「どうする?私達は宿を探しに行くけど、そこの噴水で休んでるか?」
「…………ああ。そうさせてもらう……うぷっ。」
道中、馬車旅に慣れていないグレンは酔いに酔った。
それはもう胃の中の物を空っぽにし、何度も馬車を停めるほどに。
「じゃあ私、グレンさんについてますね。」
「ふむ。そうしてやってくれ。」
アナスタシアとヴォルフが街の雑踏へと消えていく。
「なんでお前ら平気なんだよ……。」
「ふふ……まあ慣れですかね。」
噴水の縁に座り、プリシアに背中を擦られているグレン。
「ふぅ……もう大丈夫だ。ありがとな。」
「そうですか?まだ顔色が優れませんが。」
「夜風にあたってたらだいぶよくなったよ。」
「そうですか。なら良かったです。」
すると、向こうの方からアナスタシアとヴォルフが戻ってきた。
「どうじゃ、少しはマシになったか?」
「ああ、なんとかな。」
グレンか立ち上がる。
「そうか。じゃあ宿へ行こうか。近くに手頃なのを見つけたんだ。」
四人は大通りを歩き宿へと向かう。
「はぇ~賑やかな街ですね~。」
プリシアが感心しながら言う。
「今儂らがいる南側が商業区画だそうじゃ。」
「なるほど、それでお店がいっぱいあるんですね。」
店舗だけではなく、通りには出店も出ており名産品や見たことない食べ物も売っている。
しばらく通りを歩くと右手に宿の看板が見えた。
「ここ。部屋はもうとってあるから。」
四人はいつもの通り二部屋に別れる。
「食事も下の食堂で用意してくれるそうじゃがどうするかの?」
「俺はいい……。このまま休ませてもらうぜ。」
「ふむ。その方が良さそうじゃの。」
グレン以外の三人は部屋に荷物を置いたら一階の食堂へと向かい、少し遅めの夕食をとる。
「ほぅ、この羊肉を揚げた料理はなかなかいけますのう。名物というだけある。」
「ねぇねぇ、明日はどこに行く?」
「じゃーん!姫様、これを見て決めましょう!」
プリシアが懐から観光案内冊子を取り出しテーブルに広げる。
三人は冊子を上から覗きこむように頭をつきだして明日の行き先を相談する。
二時間程かけて食事と話し合いを終えた三人は各々の部屋へと戻った。
「ん?爺さんか……。」
グレンがベッドに寝ながら声をかけた。
「なんじゃ、起きておったのか。」
「いや、今目が覚めた。」
「起こしてしもうたか。すまんすまん。」
「いいさ。ん?それは?」
グレンはヴォルフが持っている皿について尋ねる。
「一応お主の分も少し作ってもらったんじゃよ。ここに置いておくから腹が減ったら食べるとよい。」
「そうか、そりゃありがたい。後でいただくぜ。」
ヴォルフは先程三人で決めた明日の予定を話す。
「若い娘達のお供は大変じゃからな。お主も早く休んだ方がいいぞ。」
「ああ、それが良さそうだな。」
二人は明日に備え日付が変わらないうちに休むことにした。
御一読頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメント宜しくお願いいたします。