姫様と二つ目の国
「あっ!見えてきたな。」
アナスタシアが指し示す先には大きな橋が見える。
国境となる大河、シール河にかかる大橋は河のこちら側にロートル兵の詰所が、向こう側にスタン共和国の兵の詰所がある。
一向はロートルの詰所に着くと早速一連の事件の話をする。
ロートル兵は話を聴くと慌てて対岸にいる共和国兵を呼びに行き事情を話す。
ロートル兵は急いでシピンの情報を書いた書状を書き上げ近隣の町村や王都に向けて早馬を出してくれた。
それが済むと四人は国境を超え対岸に渡る。
「そなたらが行方不明事件の犯人を見つけた者たちか。感謝するぞ。」
国境警備隊の隊長が直々にやってきて謝辞を述べる。
「あ、いや。でも結局逃がしてしまったから……。」
「それでもこれ以上の犠牲者は防げたのだ。旅の者達よ、心より礼を言うぞ。」
隊長の話によると、これから首都に連絡をして隊を編成しロートル側と協力して小屋へ向かうという。
「あぁ、そのことなんだが……。」
グレンが小屋の周辺にあるラムール草の群生地の話をする。
あそこは村の住人の秘密の場所で貴重な収入源になっている。
なんとか公にはしないでもらえないかと頭を下げる。
「なるほど、そういう事情が……。わかった!事件解決の功労者達の頼みだ。私から上に掛け合ってみよう。勿論ロートル側にもな。」
「そうか!恩に着るぜ!」
「ふむ、あと小屋の裏の池じゃがかなりの大きさじゃ。もしかしたらまだ魔物が潜んどる可能性がある。くれぐれも注意なされよ。」
「わかった。それもちゃんと報告しよう。」
「ありがとう。じゃあ私達はそろそろ行くよ。」
「また新しい国ですねっ!ワクワクします。」
「はっはっは!スタン共和国へようこそ。歓迎するぞ旅の者達よ。」
四人は検問所をでると西へ向かう。
「ここから道なりに一日歩けば村に着くぜ。」
「そうか、じゃあそこで私達も町に向かう準備しようか。」
「そうですね。そろそろ食糧も無くなってきましたし。」
「久しぶりにベッドで寝たいしね~。」
「ふふふ、そうですね。」
四人は平原の中に伸びる道を進んでいく。
鬱蒼とした湿原とは違い晴れ渡った空の下を歩けるのは実に気持ちいい。
「そういや、三人はどこから来たんだ?」
グレンがなんとなく三人に尋ねる。
「アイソルだよ。」
アナスタシアが答える。
「アイソル?へー、聞いたことない国だなぁ。」
「ロートルから東に山脈を超えた先にある国じゃよ。」
「とても平和な国なんですよぉ。」
「田舎だけどね~。」
「もうっ!お嬢様ったら!」
「なるほどな。その平和な国の金持ちか貴族のお嬢様ってとこか?」
「あ~、まあそんなとこかな。」
グレンはフンフンと頷いている。
今度はアナスタシアがグレンに尋ねる。
「グレンはどこから?」
「俺か?俺はシンだ。」
「ほう、やはりシンの民か。」
「シンっていうと海峡を挟んでアイソルの南にある大国だな。」
「旅をされて長いんですか?」
「国を出て二年くらいか。あちこち廻ったな。」
「お主……もしやスージン寺院の?」
「爺さん知ってんのか?」
グレンが少し驚いてヴォルフを見る。
「ふむ、お主の体術に見憶えがあってな。」
「こりゃ驚いた。」
「儂も若い頃は各地を旅したもんじゃよ。」
「ねぇジイ、スージン寺院って?」
「はい、シンのスージン寺院とは……。」
ヴォルフが簡単に説明する。
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