姫様の行き先
夜、四人は焚き火を囲いながら食事を摂る。
食事といっても携帯食の干し肉とスープではあるが。
「悪いな、俺まで馳走になっちまって。」
グレンが旨そうに炙った干し肉にかぶりつきスープを飲む。
「ふふふ、そんなに慌てずにゆっくり食べて下さいね。」
プリシアがグレンのカップにスープのお代わりを注ぎながら言う。
「それにしてもいつもこんな旨いもん食ってんかのか?」
「うーん。調理はいつもプリシアに任せてるからね。」
「は~、たいしたもんだぜ。店でもだせるんじゃねぇか。」
「ふふ、ありがとうございます。」
食後はプリシアの淹れた紅茶を味わいながら明日からの事を話す。
「ナーシャ達はスタン共和国へ入ったらどうするんだ?」
「う~ん、そうだなぁ……どうしよっか?」
「はぁ……本当に行き当たりばったりなんだな。」
グレンが呆れたように言う。
「ふむ、まずお嬢様の剣が必要ですな。」
ヴォルフの言うようにアナスタシアの剣は昨晩の大蛙達との戦いでボロボロにされ使い物にならなくなっていた。
「あーあ、愛着あったんだけどなぁ。」
アナスタシアはあの威勢の良い武具屋の店主を思い出しながら言う。
「国境近くに大きな町でもあればいいんですけど。」
「町ねぇ……。爺さん、地図あるか?」
「ふむ、心当たりがあるようじゃの。ほれ。」
グレンが地図を広げる。
「ここだ、ここなら武器屋もあると思うぜ。」
グレンが指で示した箇所には「シルア」と書いてある。
「依頼された村の人が言ってたんだよ。この村から西に進んだ所に結構大きな町があるってな。」
「へー、じゃあそこに行こうか。」
「決まりですね!」
「ふむ、ではシルアの町を目指しますかの。」
こうしてアナスタシア一向の行き先が決まった。
「もうしばらく一緒だな。」
「そうだね、よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「旅は道連れじゃな。」
四人は笑い合う。
「そういえば~グレンさんはどうして旅をしてるんですか?」
プリシアが首を傾げながら尋ねる。
「ん?俺か?俺は……。」
グレンが一瞬考え込む。
(あれ?)
プリシアにはグレンの表情が僅かに曇った気がした。
「俺は武者修行の旅かな。世界中を旅して強い奴と戦いたくてね。」
「へぇ、武道家っぽいね。」
「フォフォフォ。若さですなぁ。」
「はは、まあな。」
すると、グレンが立ち上がった。
「ごちそうさん。さて、俺は少し瞑想してくるわ。」
そう言うと少し離れた場所にある木の下まで行き胡座をかく。
「よし、じゃあ私達も魔術の修行しようか。」
「はい!ちょっと待って下さいね。今片付けちゃいますから。」
三人はグレンの邪魔にならないように焚き火の側でいつもの修行を行うのだった。
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