姫様と大蛙
ヴォルフが再び"大地壁"を大蛙達に放つ。
しかし、仲間がやられる姿を見て学習したのか得意の跳躍でかわされてしまう。
「ふぅ、同じ手は通用しませんな。」
「ああ、頭の良い蛙だ。」
アナスタシアが冗談交じりに返す。
三匹の大蛙は絶えず酸の胃液を吐きかけてくる。
攻撃の隙をついてアナスタシアは距離を詰めていき着実に斬撃を与えていく。
大蛙の一匹が脚への斬撃に苛立ち大きく上に跳ぶ。
「今じゃっ!」
ヴォルフが"小竜巻"を放つ。
風に煽られ空中で体勢を崩された大蛙が背中から地面に落下する。
「たぁっ!!」
アナスタシアが大蛙の腹に剣を突き立てる。
間髪いれずにアナスタシアの背後から別の大蛙が舌を伸ばして補食しようとする。
絶命している足元の大蛙から剣を抜き振り向き様に舌を切断しようとするアナスタシア。
(捉えた!)
しかし完璧に捉えたはずの斬撃は、舌を切断することは出来なかった。
(なっ!何でっ!)
アナスタシアが一瞬たじろいだ隙に大蛙の舌が足首に巻き付く。
(しまった!)
「姫様っ!」
ヴォルフが助けに入ろうとするがもう一匹に阻まれる。
「うぬぅ……邪魔をしおって。」
大蛙は大きく息を吸い込むとヴォルフの直上に向かって大量の酸を散布する。
「ぐっ……。」
霧雨のように降り注ぐ酸を避ける為に大きく後ろに下がるヴォルフ。
目線の先では空中に持ち上げられたアナスタシアが逆さまになりながら再度大蛙の舌に斬りかかる。
しかしまたしても斬る事はできない。
(何でっ!?)
アナスタシアは握っている剣を見る。
なんと刃から刀身にかけてボロボロになっているではないか。
二度も大蛙の腹に剣を突き立てたために胃酸により腐蝕してしまっていた。
斬るのを諦め突き刺そうと構えるアナスタシア。
(えっ!?)
大蛙はそのまま口には運ばずアナスタシアを地面に叩きつける。
「キャァァー!!」
頭部は庇ったものの背中に受けた衝撃に全身が痺れる。更にもう一度持ち上げるとまた叩きつける。
手から力が抜け剣を落としてしまう。
意識が飛びそうになるのを必死で耐える。
獲物が弱ったのを確認した大蛙はようやく補食しようとする。
逆さ吊りにされたアナスタシアは力なく揺れている。
大蛙が舌を縮めて飲み込もうとする。
(嫌っ……!!)
アナスタシアがギュッと目を瞑る。
刹那、
"旋脚鎌"
大蛙の舌が真ん中から切断された。
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