姫様、駆けつける
アナスタシアが桟橋の先端に立ち剣を構える。
ヴォルフはグレンに寄り添い魔術による解毒を行う。
「なっ!なんで……。なんでお前ら動けるんだっ!」
シピンが絶叫する。
その声に反応したのか池の中の大蛙達が岸辺に上がり感情の無い眼で獲物を見つめる。
「五匹か……。」
アナスタシアが呟く。
後ろのヴォルフ達を見る。
「ふむ。とりあえず解毒は済んだ。しばらくすれば動けるようになるじゃろう。」
「すまねぇ爺さん。助かったぜ。」
「プリシア、グレンを連れて離れておれ。」
「はいっ!グレンさん、さぁ肩を。」
「あ、ああ。恩に着るぜ、プゥちゃん。」
「プリシアでお願いします!」
プリシアがグレンに肩を貸して小屋の方に戻っていく。
「!?」
アナスタシアが反射的に後ろに跳ぶ。
先程まで立っていた場所がズブズブと溶解していた。
「姫様、こやつら酸の胃液を吐いてくるようです。」
「ああ、浴びたらひとたまりもないな。」
二人は動ける範囲の狭い桟橋から離れて池の岸辺で戦うことにする。
「くっ!厄介だな。」
大蛙達はその驚異的な脚力で跳び回り、隙あらば舌を伸ばして補食しようとする。
「たぁっ!」
またもアナスタシアの斬撃が空を切る。
「ゲレレレレ!ゲレレレレ!」
あちこちで鳴き声が聴こえ集中力を乱す。
まるで活きのいい獲物を歓迎しているようである。
ヴォルフが遠距離から魔術で攻撃するも池の中に逃げられてしまう。
ザバーンッ!
一匹を見失うとまた別の大蛙が襲ってくる。
先程からこれの繰り返しだ。
「はぁっ!」
今度は確実にアナスタシアの剣が大蛙を捉えた。
右足を切り落とすつもりで放った斬撃は大蛙の身体を覆う粘液に邪魔され傷をつけるだけに留まる。
「グェレレレ!!」
奇声を発して池に跳び込む大蛙。
追撃を阻まれたアナスタシアが悔しがる。
すかさず別の大蛙達が舌と酸でアナスタシアとヴォルフを襲う。
「うわっ!」
「ぬわっ!」
二人は間一髪避ける。
「姫様、これでは埒があきませんな。」
「ああ。無駄に体力を奪われるだけか。」
ヴォルフが杖を構える。
先端が光り二匹の大蛙を目掛けて地面が割れ、二匹の足元から地面が隆起する。
ヴォルフの放った"大地壁"によって大蛙二匹が仰向けに引っくり返る。
「姫様っ!」
「わかった!」
アナスタシアが跳躍しまだ起き上がれず足掻いている大蛙の腹目掛けて剣を突き立てる。
「グゲェッ!!」
着地すると即座に剣を抜き今度は首を突き刺す。大蛙は一瞬手足を痙攣させるとぐったり動けなくなった。もう一匹の方を見ると同様にヴォルフが"氷の矢"によって串刺しにしていた。
「あと3匹……。」
アナスタシアは池の中からこちらを凝視する残りの大蛙を見た。
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