姫様と罠
静かにドアを開けてシピンが入ってきた。
床に寝ているグレンと目が合うと口の端を上げてニヤリと笑う。
「……!!」
グレンは声を出そうとするが空気が抜けるような息を漏らすだけだ。
(なっなんだ!?身体が動かない!)
グレンの身体は痺れて動かなくなっていた。
「なんだ、目を覚ましたのか。じゃあお前から行くか。」
そう言うとシピンはグレンの両腋の下に腕を回して部屋の外に引きずっていく。
(なにしやがる!離せっ!)
グレンが声にならない声をあげる。
「ちっ、重たいなぁ。」
愚痴を漏らしながらシピンはグレンを引き摺り裏口から外にでる。
(こいつ、どこに連れてく気だ。)
グレンが目だけを動かして周りを見渡すと、どうやら小屋の裏手にあった池に向かっているらしい。
「はぁはぁはぁ……くそ、手間かけさせやがって。」
桟橋の先端まで来るとグレンを離し腹いせに蹴飛ばす。
(この野郎っ!なんだってんだ!)
睨むことしかできないグレンを見下ろしながらシピンが語りだす。
「お前とジジイはさっさと処分してやるよ。あの娘二人はたっぷり楽しんでから後を追わせてやる。」
下卑びた笑みを浮かべるシピンを見てグレンは行方不明者たちの事が浮かんだ。
(まさか、こいつがっ!)
グレンは必死に身体を動かそうともがく。
「ひひひ、無駄だよ。ニブ草の茎と赤兎花の根を煎じた特性の毒だ。生きたまま餌にするために死なないように調合したが、まる三日は動けんよ。」
(生きたまま餌だとっ?何をする気だ!?)
「お前らなんかに金のなる木を荒らされてたまるか!研究の邪魔はさせんぞ。あの盗人どもみたいに喰われやがれ!」
シピンが懐から掌位の大きさのベルをとりだす。
それをリーンッ……リーンッ…と規則的に鳴らすと、真っ暗な池の表面に赤い光が浮かんだ。
2個……4個……6個……8個……10個。
(なんだありゃ!?)
グレンは目をこらして赤い光を見る。それはゆっくりとこちらに近づいてくる。
「ひひひ、じゃあな!」
シピンはグレンを残して桟橋を戻っていく。
ザバーンッ!!
2つの赤い光が池から頭を出す。
赤い光の招待はそいつの両目だった。
「ゲレレレレ!ゲレレレレ!」
(か、蛙!?)
グレンの眼前には蛙が現れた。
ただし、体長は大人二人分くらいあるが。
(くそっ魔物かっ!う、動けぇぇ!)
大蛙は池の中から餌を見つけると口を大きく開く。
少し離れた場所でシピンが目を爛々と輝かせてグレンの最後を眺めている。
(ちっ、喰われる!)
その刹那、大蛙に向かって火球が飛ぶ。
間一髪水中に沈んで火球をかわす大蛙。
「グレンっ!無事かっ!」
アナスタシア達がグレンの側まで走ってきた。
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