姫様、見つける
ラムール草は清流の水辺に生息する薬効のある草だ。
四人は離れすぎないように手分けして湿地帯の水の流れのある箇所を見つけたら、そこから上流へ遡って人がいた形跡を探す。
探索しだして半日程経ったか、数本目の小川を遡っているとアナスタシアが声を上げる。
「あっ!これ……。」
アナスタシアが指差す先には極々薄く足跡が残っている。
「おっ!当たりか!」
グレンが気色ばむ。
足跡は上流の方を向いていたが、ここを通ってから時間が経ちすぎたのか、他には見当たらない。
「ふむ。何者かがここを通ったのは間違いないですな。」
「そうだね。この先に何かあるのかも。行ってみよう。」
一向はさらに上流を目指して進む。
道は次第に険しくなり、道中草木を掻き分けないと進めない程であった。
そんな道とは言えないような道を進むこと数時間。
ついに拓けた場所に出た。
「ほう、これは凄い。」
ヴォルフが感嘆の声をあげる。
そこは、ラムール草の群生地帯だった。
くるぶし位の深さの水辺に件の薬草が見渡す限り生息していた。
「ホントにあったのか。ジイさんやるじゃねーか。」
「ふむ。しかしここに何か手掛かりがあるかはまだわからんがな。」
四人は群生地帯を避けるように脇道を歩きながら何か手掛かりがないか探してみる。
「ねぇ、あそこに小屋があるよ。」
またしてもアナスタシアが指差す先には木でできた小屋があった。
「こんな所に誰か住んでるんでるんでしょうか?」
一向は小屋の方へ行ってみることにした。
近づくにつれて小屋からは人の気配が感じられた。
窓からは暖色の灯りがもれている。
軒下には背負って使用する籠がいくつもの重ねて置かれている。
薬草を運ぶ用だろうか。
「人がいるみたいだね。」
「そうみたいですね。なにかお話伺えればいいんですが。」
「よし、行ってみようか。」
アナスタシアが小屋のドアを数回ノックして声をかける。
「ごめんくださーい!誰かいますかー!」
小屋の中からバタバタと音がしてドアが僅かに開く。
隙間から痩せた男の顔が覗く。
「なにか?」
男は警戒しながら尋ねる。
「あっ、えっと実は私たち人を探してて……。あそこに生えてる薬草を採りに来た人なんだけど……。」
「ラムール草を?さてそんな人は知りませんが。」
「そうですか。何か人が来た形跡なんかなかったかな?」
男はしばし考えた後にドアを全開にする。
「立ち話もなんですし、良かったら中へどうぞ。後ろの皆さんも。」
男は一向を中へと誘う。
アナスタシアは振り返り目で三人に問う。
ヴォルフが頷くとアナスタシアは男に言う。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「ええ、どうぞどうぞ。」
四人は小屋の中へと進む。
「狭いとこですが。」
男はそう言うと四人に席を進め、自分は炊事場に引っ込んだ。
「どう思う?」
アナスタシアが皆に尋ねる。
「あの方、こんなところで何してるんでしょう?」
真っ先にプリシアが疑問を口にした。
「見た所、ここに住んでいるようじゃが。」
部屋を見渡すと奥の方にベッドがある。
「こんな所に一人でか?随分と物好きな奴だな。」
四人が小声で話していると男がトレイに湯気のたっているカップを乗せ戻ってきた。
「どうぞ、この辺で採れる薬草を煎じたお茶です。」
男はそれぞれの前にカップを置く。
「あ、ああ。どうも……。」
アナスタシアが礼をいうと男は奥から自分の椅子を持ってきて四人の側には座る。
「それで、皆さんは人探しをされてると?」
男から話を切り出してきた。
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