姫様、協力する
グレンがナメル湿原にやってきたのは三日前だった。
旅の途中、スタン共和国の領内にある小さな村に立ち寄ったグレンはある話を耳にする。
曰く、関所を越えて隣国のナメル湿原に薬草採りに行った村人11名が行方不明になっているというのだ。
最初に行方不明になった男は1ヶ月程前に湿原に向かった。
通常なら五日程で帰ってくるのだがそのまま帰ってこなくなかった。
最初の男から二日後にも村の男が湿原に向かったが、これも帰って来なかった。
湿原で採れる薬草は良く効くと評判で村の名産だったため湿原へ向かう者は後を断たない。
最初の男が湿原に向かってから十日の間に11人もの村人が湿原へ薬草を採りに行き、1ヶ月経った今も誰一人帰ってこないのだという。
周辺地域を管轄する兵部隊へと書簡を送ったが捜索のためとはいえ他国に兵士を派遣するのは時間がかかるらしい。
「そうか、そいつは心配だな。よしっ、俺が探して来てやるよ。」
グレンはさっそく村長の家を訪れ、行方不明の村人の特徴や名前を聞き、その日のうちには湿原へと向かっていた。
※※※※※
「それで、この三日間探し回ってるんだが手がかりなしなんだよな。」
グレンはここに来た経緯を肉を頬張りながら話した。
「なるほどね。行方不明者か……。」
「ああ。いやぁ想像以上にこの湿原が広くてな。参ったぜ。」
あまり参っていなさそうに言う。
「行方不明……魔物の仕業でしょうか?」
「ふむ、まだなんとも言えんがその可能性はあるのぅ。」
プリシアの疑問にヴォルフが答える。
「ねぇ、私達も行方不明の村人を探してあげないか?」
アナスタシアがヴォルフとプリシアに問う。
「ふむ、良いと思いますぞ。」
「そうですね。四人で探した方が見つかりやすいですよ。」
「決まりだね。どうだいグレン?」
今度はグレンに問うアナスタシア。
「どうって……そりゃ俺は助かるが本当にいいのか?ナーシャ達も何か目的があってここに来たんじゃないのか?」
アナスタシアは自分達がスタン共和国へ行くために湿原を歩いていたことを話す。
「なるほどな。旅の途中ねぇ。だったら尚更ここで足踏みしてるわけにはいかないんじゃねーか?」
「別に急ぎの旅でもないしね。それに話を聞いた以上どうなったか気になっちゃうし。」
「フッ……確かにそうだな。じゃあお言葉に甘えるとするか。」
グレンが手を差し出す。
「宜しく頼むぜナーシャ。」
アナスタシアも手を出して握手をする。
グレンはヴォルフとプリシアとも握手をする。
「しかし、どうやって探しゃいいんだろうな。手がかり無しだ。」
グレンが両手を挙げてお手上げだと表す。
「うーん。確かに闇雲に探すのもなぁ。」
「ふむ、グレンよ。村人達は薬草を採りにここに来たのであろう?」
「ああ、そうだぜ爺さん。」
「ならば、その薬草の生えている場所を探してみればもしかしたら何か手がかりがあるやもしれん。」
「なるほどぉ。いっぱい生えてる秘密の場所なんかあれば皆さんそこに向かったかもしれませんしね。」
「そういう事じゃ。」
「はぇ~爺さんやるじゃねーか。流石に年の功だぜ。」
「それで、その薬草の名前はわかるかのう?」
「えーっと確か……ラムール草とか言ってたような。」
「ほう、ラムール草か。確かに珍しい草じゃな。」
「ジイ分かるの?」
「はい、生息場所も予想できますので明日から探してみますかな。」
明日からの探索に備えて四人は交代で見張りをしながら早めに休む事にした。
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