姫様の練習の成果
アナスタシアは魔物の腕がギリギリ届く距離を保ち、周囲を走り空振りを誘う。
魔物の視界に入り攻撃を誘ってはかわす事を繰り返す。少し離れた所からヴォルフが火球を顔に向けて打ち続ける。
それを鬱陶しそうに翼で防ぎながら魔物は粋の良い獲物を捉えるのに必死になっている。
魔物が腕を横に大きく振るう。
(くっ……かわせないっ!)
剣を横に構え魔物の横凪ぎを受け止める。
アナスタシアは大きく宙に吹き飛ばされるが、空中で回転し体勢を建て直し着地する。
「ふぅ……。よしっ!練習通り。」
この数日間で手に入れた魔物の情報を元にヴォルフと想定していた動きだった。
魔術で吹き飛ばしてもらい、空中で体勢を建て直す訓練は十分積んできた。
(よし、通用するぞ。)
アナスタシアは再び魔物との間合いを詰め周囲を動き回る。
苛立った魔物は翼を羽ばたかせ空中へと舞い上がる。
「姫様っー!!」
ヴォルフがアナスタシアに注意を促す。
アナスタシアとヴォルフは魔物を見上げて急降下してくる位置を確認すると全速力で離脱する。
ズドーンッ!!
三度目の轟音が町に轟く。
土煙や瓦礫が舞い散る。
もぞもぞと魔物が立ち上がり周囲を見渡すと、離れた場所にアナスタシアとブォルフが立っていた。
「はぁはぁはぁ……結構ギリギリだな……。」
二人は離れた場所にいるお互いの無事を確認すると、またしても魔物に向かっていった。
※※※※※
アナスタシア達が魔物と交戦している場所から少し離れている宿でプリシアも町の異常に気がついた。
最初の轟音に驚いてプリシアが部屋の窓から外を見る。かなり向こうの方で白い煙があがっている。
「あれは……!」
とうとう魔物が現れたと察したプリシアはアナスタシアとヴォルフなら既に向かっているだろうと思い自分は二人の帰りを待とうと気持ちを落ち着かせる。
(あっ!ロンさんは……。)
プリシアはロンもこの騒ぎに気づいているか確認するために部屋を出る。
「きゃっ!」
部屋を出た瞬間、廊下を走っていく人影にぶつかる。
「わわ!ご、ごめんなさい!」
反射的に深くお辞儀をして謝るプリシア。
「あ、あれ?」
頭を上げると誰もいない。
(まぁいいか……。)
気にせずロンの部屋へ向かいドアをノックする。
「ロンさん?ロンさーん?」
何度か呼んでみるが返事がない。
(あれ?ラウンジかしら?)
ドアノブをゆっくり回してみるとドアが開いた。
部屋には誰もいない。
窓は開いておりカーテンが風に揺られていた。
(ロンさん……?)
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