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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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姫様、教える

「どうぞ。」

「あ、ありがとう……。熱っ!」


アナスタシア達の部屋に来たロンはお茶を出してくれたプリシアに礼を言いながら一口啜る。


「ロン、さっきも言ったけど勝手な行動はなし。いいね?」

「ああ、わかってるよ。君たちに従う。」

「うむ、お主の仕事は後方支援。プリシアと組んで儂らが休んでいる間に魔物が現れたらすぐ知らせてくれ。」

「え?俺は戦わないのか?」

「ああ、魔物と直接戦うのは私とジイだ。」

「そんな……。俺だって!」


反論しようとするロンにアナスタシアが厳しい顔をして告げる。


「ロン、約束を忘れたの?私達の指示に従ってくれないなら仲間には……。」

「わ、わかったよ!従う、従うから!」

「よし、じゃあさっそく今日から始めよう。」

「私は夕食まで外で剣の鍛練をしてくるからプリシアとロンはそれまで休んでてくれ。」


そう言ってアナスタシアは席をたち部屋を出ていく。


「私はもう目が覚めちゃったのでこのまま起きてますね。ロンさんはどうぞ休んでて下さい。」 

「は、はあ……どうも。じゃあ……。」


ロンはプリシアに頭を下げると自室へと戻る。


※※※※※


「はっ!てあっ!」


宿の中庭でアナスタシアが城でミアソフ兵長に教わった剣の型をなぞりながら剣を振っている。


(……ん?)


気配を感じ振り向くとロンが剣を手にこちらに歩いてきた。


「はぁ……夜まで休めって言わなかったか?」

「いや、ははは……。なんか興奮して眠れなくてさ。それに座り込みしながら時々寝てたんだよ。」


ロンが照れ笑いしながら答える。


「それで、せっかくだから剣を教えて貰おうかと思ってさ。」

「ロン……君が剣を振る必要はない。さっきも言ったけど……。」

「戦うのは君と魔術師のジイさんだろ?わかってるよ。」


ロンが不服そうに口を尖らせる。


「でもさ、魔物を倒して兵士になれたらさ少しくらい剣も扱えないとカッコ悪いだろ?」


アナスタシアはロンの楽観的な発想に呆れながらもその前向きさに少し感心してしまう。


「はぁ、わかったよ。少しだけね。」

「え!?教えてくれるの?」

「君の場合、教えるまで座り込みでもされそうだしね。」

「へへへ……バレたか。」

「言っとくけど私だって人に教えられるほど強いわけじゃないんだ。」 


そう断ってからアナスタシアはロンに剣の構え方を教えてやる。


「そうだ、そのまま切っ先を相手に向けて。」

「こ、こうか?」

「うーん、震え過ぎだけどまあいいか。じゃあ私の真似して振ってみて。」

「おう!」


ロンがアナスタシアを横目で見ながら剣を振る。


「ほら!姿勢が前に倒れてる!もっと強く握り混む!」

「ひっひぃ……。」


しばらくロンの素振りに付き合ってやるアナスタシア。ロンも必死に剣を振るうが20回も降ったところで膝から崩れる。


「はぁはぁはぁ……。お、重い……。」

「まずこれを休まず100回は出きるようになることだね。」

「ひ、100!?」


ロンは仰向けに寝転がり息を整える。

アナスタシアは休んでいるロンを放置し自分の鍛練に戻る。

するとロンが話しかけてくる。


「君はどっかのお金持ちのお嬢様なんだろ?俺なんかより君の方が親が心配しそうだけど。」

「まあね。お父様は心配してたな。」

「ふーん、母ちゃんは?」

「お母様は子供の時に亡くなった。」

「あっ!ご、ごめん……。」

「いや、いいよ。君もお父さんが亡くなってるんだっけ。」


ロンが気まずそうに立ち上がりまた剣の素振りを始める。


「ああ、クソ親父さ。酒ばかり呑んで、博打ばかりして気にくわない事があると母ちゃんを殴って。だからせいせいしたよ。」

「そうか……。」

「だからっ!俺がっ!母ちゃんにっ!楽させてっ!やりたいんだっ!」


まるで父親が目の前にいるように剣を振るロン。

しかしまたしても20回で根をあげてしまう。


「ふぅ、さてそろそろ戻ろうか。」

「はぁはぁはぁ……わかった……。」


激しい呼吸でロンが答える。

二人して宿に戻りアナスタシアはいつも通り風呂へ。

ロンも自室へ戻る。

その後、四人で食事をとりアナスタシアとヴォルフは休み、プリシアとロンが夜の見張りに備える。

こうして町に来て何度目かの夜が更けていった。








御一読頂き誠にありがとうございました。

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