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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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姫様、村を救いにやって来る

「あとどれくらいで着くのかな?」

「もう間もなくですな。そろそろ見えてくる頃かと。」


馬車に揺られながらアナスタシアがヴォルフに尋ねる。馬車が三台連なりアイソルを出立したのが今朝のこと。アナスタシアとヴォルフが乗る馬車を真ん中にして前後に兵士たちの乗った馬車が走る。

討伐隊は9名の兵士で組まれた。

各馬車の御者に三名、前後の馬車に3名づつ乗っている。

規則的な車輪の音を聴いていると瞼が重くなるので何度もヴォルフに同じ質問をしてしまうアナスタシア。


(もう間もなくねぇ……)


ひょいっと窓から顔を出し前方に目を凝らすと、遠くの方に薄らと建物らしき影が見えてきた。

年に何度か父王と共に周辺国に外交を兼ねて遠出するアナスタシアだが、足元にあるタンザ村には初めてくる。城下町とは違う長閑な風景が近づくにつれて、ついに魔物を此の目で見れるという期待が膨らんでいく。

そんなアナスタシアの様子を長く伸びた髭を撫で苦笑しながらヴォルフが見ていた。


※※※※※※


村の入り口に馬車が到着すると道に沿って村人たちが大勢集まっていた。


「アナスタシア様ー!!」

「ようこそタンザ村へ!!」

「騎士様たちが来てくれたんだ!もう安心だな!」


こんな小さな村にまさか姫君が来ることなど夢にも思わなかったのだろう。

年寄などは涙を流しながら隣の孫に支えられている。まさに村を挙げての大歓迎だ。

馬車が停まりアナスタシアが降りてくると歓声があがる。

アナスタシアは外交用の猫を被り、村人たちに微笑みながら手を振る。


「おぉ!!今俺に手を振って下さった!」

「馬鹿!違う今のは俺だ!」

「あ~綺麗な方なのねお姫様って。」


またしても歓声が上がる中、村長がアナスタシアの前に進み出る。


「ようこそ、お出でくださいましたアナスタシア姫様。騎士様たちもこんな小さな村の為にありがとうございます。」


地面に額がつく程に頭を下げて口上を述べる村長にアナスタシアが心配いらないとばかりに笑顔で答える。


「魔物の件は我々に任せて下さい。必ずやこちらの兵士たちが退治してくれるでしょう。」

「ははぁ!宜しくお願いします!」


またしても深々と頭を下げる村長の肩に手を乗せて安心させるアナスタシア。


「はっ!失礼いたしました!長々と外で話てもなんなので、お泊まりいただく宿屋までご案内いたしますじゃ。」


村人たちの歓声を受けながら村唯一の宿屋へと案内される一行。


「狭いところですがどうぞお寛ぎ下さい。」


宿屋の主人が挨拶をしながら各部屋を案内してくれる。二階建ての宿屋は全部で5室。二階の2部屋をアナスタシアとヴォルフが使い、1階の2部屋を討伐隊の9名が、もう1部屋を作戦会議室として使用することとなった。


「皆様がいらっしゃると言うことで貸し切りにしときましたんで!」

「アンタ!見栄ばっか張るんじゃないよ!いつも貸し切りみたいなもんじゃないのさ!」

「うっ……言うんじゃないよそんなこと!」


主人と妻が言い合いをしてる中、妻のスカートの後ろから小さな女の子が顔だけだしてアナスタシア達を見つめている。


「ほらメル、お前もご挨拶なさい!」


母親に背中を押されアナスタシアの前に出てきた女の子。

照れ臭いのか下を向いて手を握り締めている。

アナスタシアは膝をつき目線を合わせてあげると、


「はじめまして、私はアナスタシア。君はメルっていうの?」


とメルに問いかける。

メルがコクンッと頷き頬を赤らめながらアナスタシアを見る。  


「あなちゅたちあ?」

「こら!アナスタシア様だよっ!」


慌てて叱ろうとする母を手で制して話を続けるアナスタシア。


「うん、アナスタシア。メルはいま何歳なのかな?」


少し考えてメルが答える。


「みっちゅ。」

「そうか、三つなんだね。今日はメルのお家にお世話になるんだけど仲良くしてくれるかな?」


また少し考えて、メルが笑顔で頷く。

アナスタシアも微笑んで立ち上がるとメルに手を振り自室へ向かう。

兵士に部屋まで荷物を運んでもらいようやく一人になる。

ギィとベッドに腰かけると軋む音がする。


「ふぅ……あーあ、ずっとこんなドレスじゃ肩がこっちゃうよ。」


そういうとさっそく荷物の中から身軽な服を取り出し着替えることにする。

ドレスを脱ぎ去り肩を片方づつグルグルと回すと、膝丈のズボンを履き、ワンピースを着る。ヒールを脱ぐとブーツを履いて紐をしっかり結ぶと、


「よし!いきますか!」


アナスタシアは化粧台の鏡に映る自分に向けて気合いをいれた。


お読みいただき誠にありがとうございます。

コメントやレビューなど良かったら頂けますと励みになりますので宜しくお願いいたします。

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