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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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姫様、助けられる?

「!?」

「は?」


アナスタシアだけでなく男も驚いている。


「おいおい、レディに拳を向けるなんて男の風上にも置けないな。」


アナスタシアが隣を見ると、旅装束の長身の男が立っていた。

サラサラの金髪、目鼻立ちのしっかりした彫刻のような美形だ。


「……。」


アナスタシアがポカンとしていると、男はプリシアにも話しかける。


「後ろの君も大丈夫かい?」

「は、はぁ……どうも……。」


プリシアもどうしたら良いのかわからない。

するとチンピラは今度はこの男に矛先を向ける。


「おい!キザ兄ちゃん、こんなことして只で済むと……。」

「思ってるよ~。」


男の小馬鹿にした態度にチンピラが激昂する。


「ふざけんなぁ!」


男に殴りかかるがひらりと避けられ、足を引っかけられ転倒する。


「悪い悪い、綺麗好きなんでね。反射的に避けてしまったみたいだ。」

 

周囲から笑い声が上がる。


「ふ、ふ、ふざけやがってぇ!」


チンピラが立ち上がり、隠し持っていた短刀を取り出す。


「ぶ、ぶっ殺してやる!」


今度は周囲から悲鳴があがる。アナスタシアとプリシアはおいてけぼりだ。


(ひ、姫様どうしましょう……?)

(どうしよう、なんか大事に……。)


囁き合う二人。

しかし長身の男は涼しげだ。


「危ないなぁ。刃を振るう資格があるのは振るわれる覚悟がある奴だけだぜ。あんたには覚悟はあるかい?」

「ごちゃごちゃうるせーんだよ!」


チンピラが短刀を構え、無防備の男に突進する。

短刀が胸に刺さるかと思われた瞬間、チンピラは宙に浮いていた。


「なっ!」


アナスタシアが目を見開く。  


(見えなかった……。)


チンピラは路上に背中から落下する。

ドシンと背を打ち付け痛みと苦しさでもがいている。


「く、くそがぁ!」 


それでもまだ立ち上がるチンピラに男は溜め息をつく。


「やれやれ、しつこい奴だなぁ。レディ達がうんざりしているよ?」

「黙れ!ぶっ殺す!」

「ん?どうやって?」


いつの間に奪ったのか男は短刀をクルクル回しながら言う。


「てめぇ、いつの間に!」

「だからもうやめたまえ。」

「うるせー!!」


やけになって殴りかかってくるチンピラに向けて短刀を向ける金髪男。

まさか斬り殺ろすのかと危惧したアナスタシアが止めようとする。

しかしその刹那、いくつもの剣閃が走る。


「はっ!?」


あまりの速さにまたしてもアナスタシアは目を見開く。殴りかかったチンピラは男の凄みに圧倒されて固まっている。


「あ?なんともない……?」

 

すると、チンピラの衣服がバラバラに切り裂かれる。

アナスタシアやプリシア、周囲の野次馬たちも何が起こったのかわかっていない。


「おいおい、こんな町中で晒すにはアンタの身体は醜くすぎるぜ。」


金髪男が言い捨てる。

チンピラは自分の格好を認識すると、恐怖に叫び声をあげながら野次馬を押し退け走り去った。

周囲からは拍手と歓声があがる。


「ふぅ……とんだ目に会ったね二人とも。へいマスター!こちらのお嬢さんに新しい菓子を。」


そう言うと露店商(マスター)に代金を渡す。


「ありがとうございます。でもお金なら……。」


プリシアが代金を返そうとすると、人差し指を立て左右に揺らす。


「チッチッチッ。レディ、どうぞお受け取りください。ナイトからのプレゼントです。」


そう言うとウィンクする金髪男。


「は、はぁ……ははは……。」


顔がひきつるプリシア。

しかし助けてもらった恩人ではあるので無下にはできない。


「こちらのレディもなかなかに勇敢だね。でも、ああいう悪漢は我々ナイトにお任せあれ。」

「あ、ああ……どうも。それより何者なんだ?」


まったく気配を感じさせずにアナスタシアとチンピラに接近していたこと。

チンピラをいつの間にか投げ飛ばしたこと。

そして、目で追いきれない速さの剣技。

聞きたいことは色々あった。


「はっはっは。通りすがりのナイトだよ。レディのピンチに敏感なもんでね。」


終始こんな感じなのでアナスタシアははぐらかされているのかと勘ぐってしまう。


「それにしてもロートル国民というのは、少々薄情ではないかな?レディが悪漢に絡まれていても誰も助けに入らないとは!」


わざと野次馬に聴こえるように金髪男が言う。

野次馬たちは気まずそうにその場を去っていく。


「ではお嬢様方、私はこれで失礼いたします。」

「えっ?は、はあ……ありがとうございました。」

「ああ、ありがとう……。」


アナスタシアとプリシアは最後まで金髪男のペースに振り回される。


「なんだったんだ?」

「なんだったんでしょう?」


顔を見合わせる二人であった。







御一読頂き誠にありがとうございました。

もし良かったらブックマークやコメント頂けますと幸いです。

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