姫様、王都へ
馬車にのんびり揺られること半日、三人はロートル王都へとやって来た。
「はぁ~大きいですね~。」
「久しぶりに来たけどやっぱり賑やかだね。」
「うむ、王都は領内の中心にありますからな。周辺の町や村から商売や観光で人が集まってくるんですな。」
三人は客品扱いということで、都で一番立派な宿をあてがわれた。
まずはそちらに行って、明日改めて国王に謁見する流れとなっている。
「どうする?まだ日がくれるまで時間があるけど?」
アナスタシアが二人に尋ねる。
言下に都を見物したいと感じられる聞き方だ。
「儂は宿で休ませてもらいますかの。」
「うーん、私は……都を見物したいです。」
「あっ、じゃあ私も一緒に行こうかな。」
「ふふふ、では姫様、荷物を置いたら出掛けましょうか。」
こうして日没まではそれぞれ自由に過ごすことになった。
アナスタシアとプリシアは連れだって町へ繰り出した。流石王都だけあって、人がひっきりなしに行き交い賑やかだ。
二人は露店で初めて目にする甘味菓子を買い、武具屋や雑貨屋をひやかし、町の中心にある大きな噴水広場までやって来た。
休憩のため空いているベンチに腰かける。
「は~やっぱ広いね。」
「ですね~。でもお店もいっぱいありますし飽きないですね。少し疲れますけど。」
しばし、道行く人々を眺めながら雑談に花を咲かせる二人。
「さて、そろそろ戻ろっか。」
「はい!」
二人はヴォルフの待つ宿へと向かう。
大通りはまだまだ人通りが多く混雑している。
ヴォルフにも先程食べた菓子を買っていってやろうということになり、支払いを済ませプリシアが菓子を受け取ると、
「きゃっ!」
プリシアが尻餅をつく。
どうやら人とぶつかったらしい。
すぐにアナスタシアが駆け寄る。
「大丈夫!?」
「あいたたた……は、はい大丈夫です。すみません……。」
「おい!何処に目つけてんだよ!あぶねーだろ!」
ガタイの良い男が二人を怒鳴り付ける。
アナスタシアがプリシアに手を差しのべ立たせると男に向き合う。
「危ないのはそっちだろ。こっちは立ち止まってたんだ。何処に目ををつけてるんだ?」
「ないぃ?誰に向かって言ってんだ?ああん?」
「お前だ。」
「ひ、姫っ……お嬢様……。」
睨み合うアナスタシアとチンピラ。
周りの人々はガラの悪い男に絡まれている娘に同情はするものの遠巻きに見ているだけだ。
何人かが憲兵を呼ぶべきと囁きあっていると、
「おいおいお嬢ちゃんよ。どうせ殴られないと思ってんだろうが、俺はそんなもん気にしないぜ。」
「だと思ったよ。下衆が。」
「ああん?舐めんなぁ!」
チンピラがアナスタシアに殴りかかる。
アナスタシアには余裕でかわせる速さだ。
紙一重で避けようとしていると、横から手がにょきっと出てきて、男の拳を受け止めた。
御一読頂き誠にありがとうございました。
もし良かったらブックマークやコメントをよろしくお願いいたします。