姫様、目覚める
小鳥の囀りが聴こえる。
閉じた瞼の上から日の光が当たり目覚めを促される。
「んん……。」
寝返りをうち光を避けるが一度目覚めてしまったので再び眠りに落ちる気がしない。
「ふわ~あ……。」
欠伸をしながらアナスタシアがベッドの上で目を覚ます。
するとそこに丁度部屋のドアミラーを静かに開けてプリシアが入ってきた。
「プリシア?」
「きゃっ!」
睡眠中だと思っていたアナスタシアに急に声をかけられ驚くプリシア。
「ひ、姫様!お目覚めでしたか。」
「ああ、今しがたね……。」
ベッドに横になりながらアナスタシアが答える。
「えっと、あれ?なんで私ベッドで?」
野盗達のアジトで戦って、それから少し休もうと……。
少しずつ記憶をたぐる。確か前にもこんなことあったなぁと思っているとプリシアが説明してくれた。
どうやらアジトでの大暴れの後、仮眠のつもりで休んだのだが、王都からの討伐隊が来ても目覚めなかったらしい。
仕方ないので馬車で町まで送ってもらい、ヴォルフがベッドまで運んだらしい。
「う~ん、そんなことが……。」
「私も詳しくはまだ聞いてませんので、食事がてらヴォルフ様に聞かれては?」
「そうだね。そうしようかな。」
ベッドから立ち上がろうとすると身体のあちこちが痛んだ。
プリシアが寝巻きに着替えさせてくれたらしいのだが、あちこちが青アザや切り傷があったらしい。
「もう、姫様ったら女の子なんですから気を付けてくださいね!」
とプリシアが涙目で訴えていた。
「よし、行こうか。」
「ヴォルフ様を呼びにいきましょう。」
隣の部屋に行くとヴォルフが窓際で読書をしていた。
「おお、お目覚めになりましたか。」
「ああ、よく寝たよ。前にもこんなことがあったような……。」
アナスタシアが自嘲して微笑む。
「フォフォフォ。寝る子は育ちますゆえ良いことかと。」
「チェッ。まあそれで、あれからの事を聞きたいんだけど。」
「かしこまりました。それではもう昼食の時間ですし、外に食べにいきましょう。そちらでお話いたします。」
三人は町に出て食事のできる店を探す。
歩いていると呼び込みをしている店があったので入ることにした。
食事の匂いを嗅いで急に空腹を思い出したアナスタシアは話の前に腹を満たすことにする。
あっという間に二人分を平らげたアナスタシアにヴォルフとプリシアが目を丸くする。
いつもの食後のティータイムを楽しみながらヴォルフが話す。
野盗達を捕らえてから次の日の昼前に討伐隊がアジトへやって来た。
ヴォルフがこっそりと森の中に道標を残しておいたので討伐隊はすんなりアジトまで来れたらしい。
アジトに到着した討伐隊は野盗達が牢屋に閉じ込められている事に驚いたが、見張りをしていたヴォルフが一部始終を説明すると謝意を述べ野盗達を厳重に拘束し、馬車で王都まで連行していった。
また、助けられた女性達も各々の帰る場所へと送り届けられたという。
アナスタシアを起こそうとしたが、揺すっても頬を軽く叩いても決して起きなかったそうだ。
しかたなく、馬車に乗せてもらいヴォルフが宿屋まで運んだ。
二人が宿屋へ入ると、プリシアがロビーで待っており、泣きながら抱きついてきたという。
「もう、心配しましたよ~!」
プリシアが頬を膨らませながら言う。
「それと、姫様。あのご婦人ですが……。」
「ああ。」
アナスタシアがずっと気にしていた事だ。
「姫様に伝言が……。」
「ありがとう、貴女達が来てくれたのはあの人が私達を守ろうとしてくれたんだと思います。
あの人が望むように娘と二人で強く生きてみます。」
「……だそうです。」
「そうか、良かった。」
アナスタシアが微笑む。
「あと、少し厄介なことになりましてな……。」
「厄介?」
「はい、何でも今回の野盗退治の件を王都で表彰するらしく城まで出向く事になりましてな。」
「え~!いいよ、面倒臭い。」
「儂も断ったのですが向こうも折れませんでな。仕方なく姫様が目覚めたら行くと伝えました次第です。」
「でも、流石に王様にあったら姫様の正体バレませんか?」
「うむ。じゃから姫様はなるべく顔を晒さぬようお願いしますぞ。」
「うぇ~。せっかく城から出たのにまた城にいくのか~。」
アナスタシアの愚痴にヴォルフとプリシアが苦笑いをする。
その後、もう一杯紅茶を頼み三人は宿屋へ帰った。
ご覧頂き誠にありがとうございました。
良かったらブックマークやコメント頂ければ幸いです。