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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
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姫様、追い詰められる

アナスタシアが果敢にも大男へ斬りかかる。

腕力では圧倒的な差があるため素早い斬撃を重ねて手数で押す。

剣での攻撃では決定打にはなり得ないと判断したアナスタシアはなんとか魔術での攻撃を繰り出そうとするも、未熟なアナスタシアではヴォルフのように無詠唱で発現できず、精神集中にも時間が必要だった。

当然、敵がそんなものを待ってくれるはずはない。


(くっ!まだまだ実戦じゃあ使い物にならないのかっ!)


アナスタシアの動きが少しずつ鈍くなり、防戦一方になりつつあった。

ヴォルフも残った手練れの野盗相手にてこずっているようだ。

大男の手斧がアナスタシアを捕らえる。

間一髪、防御が間に合い剣で受け止めるも、足の踏ん張りが効かず、後方へ大きく吹き飛ばされる。


「がはっ!」


落下時に背中をしこたま強く打ち、一瞬呼吸ができなくなる。

ヴォルフ達の方に吹き飛ばされてしまったので、二人と野盗達は対峙する形になってしまった。


(姫様っ!大丈夫ですかっ!?)

(ギリギリね……はぁはぁ……これってかなり不味い状況だよね?)

(はい、思っていたより手練れが多く戦いなれた連中です。)


二人は小声で話ながら剣と杖をそれぞれ構えて敵の出方を伺う。


(幸い、後ろは出口への通路です。撤退も可能かと。)


ヴォルフの提案にアナスタシアは思考が高速で回転する。

屈辱と命が天秤の上に乗せられる。

アナスタシアは野盗達の後ろ。

拐われた女性達が閉じ込められている牢を見る。

不安や期待、様々な感情の入り交じった視線でこちらを見ている。


(ふっ…………。)


アナスタシアが自嘲気味に笑う。


(私達が逃げればあの女の人達が何をされるかわからない。勝つ方法を考えるんだ。)

(姫様…………。御意にございます。)


野盗は残り手練れ三人、それに加えてあのお頭の大男だ。

アナスタシアは疲労困憊の中、諦めず考える。

するとヴォルフがアナスタシアに言う。


(姫様、剣を足元に置いて目を閉じて下さい。儂が合図するまでは決して開けないで下され。) 

(なっ……いや、わかった。)


ヴォルフの意図がわからず質問しかけたアナスタシアだが、ヴォルフを信じて言うとおりにする。


「あ?何の真似だ?」


大男がアナスタシアの意外な行動に面食らう。

アナスタシアは何も答えず、剣を置いて目を瞑っている。

さらにヴォルフまで目を瞑ってしまう。


「けっ!ようやく諦めたか!」

「だがもう遅いんだよっ!ジジイは八つ裂き、ガキは俺らの玩具にしてから殺してやるよ!」


部下達はアナスタシアたちの行動を降参の態度と受け取り勝利に酔い知れている。

しかし大男だけは腑に落ちないでいる。

この二人が降参などするか?

特にさっきまで大暴れしていたこのガキが。

あり得ない。

何か企んだか?

そう思い警戒しながら二人に近づこうと一歩前に出た時だった。


ヴォルフを中心として凄まじい暴風が吹き荒れる。


「うわっ!」

「何だっ!くそっ!」 

「ぐっ!」


野盗達は吹き飛ばさないように、姿勢を低くして腕で顔を庇っている。


一瞬にして竜巻が暴れ狂い、部屋の中の物を巻き上げる。

篝火や松明も全て灯っていた火が消えてしまい、暗闇が訪れた。


(今です!)


真っ暗闇の中、ヴォルフがアナスタシアの背中を叩く。目を開けた瞬間ヴォルフの意図を察したアナスタシアが剣を拾い上げる。

急な暗闇で野盗達は視界を失っている。

事前に目を閉じていたアナスタシアとヴォルフだけが闇を味方にしていた。

音で居場所を悟られないように素早く静かに動く。

大男は先程までアナスタシアがいた場主に斧を振り下ろしている。


「くそっ!どこだっ!」


手当たり次第斧を振り回す大男だが、


「ギャー!」

「なっ!なんだ!?」

「ぐわっ!」


部下達を巻き込んでしまう。


「ちっ!」


ヴォルフが作った好機を逃さないようにアナスタシアは冷静に剣を構え、大男の大振りの後の隙をついて斬りかかる。


「ぐぎゃーー!!」


暗闇に凄まじい叫びが木霊する。

大男の足元には斧を握ったままの右腕が落ちていた。






御一読頂き誠にありがとうございます。

もし良かったらブックマークやコメント頂けますと幸いです。

宜しくお願いいたします。

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