Interlude
王都アステリア。
都の南側にある大噴水広場でプリシアは往来を行き交う人々を眺めていた。
(姫様……。)
噴水の縁に腰掛けながら水の中に手を浸す。
波紋が拡がり水に写った自らの顔を歪めた。
もう何日もこの調子で朝から日没までアナスタシアを探している。
(あぁ……姫様……ご無事でいてください。)
祈るような思いの代償かプリシアの顔色は悪く頬は痩せこけてしまっている。
ヴォルフからは再三休むように言われているが、プリシアは頑なに街へと繰り出すのだ。
ゴーン!ゴーン!
正午を知らせる鐘が鳴り響いた。
「あっ……。」
いつの間にかこんな時間になっていた。
昼には一度宿屋に戻りヴォルフと交代する約束だった。
もしかしたらアナスタシアがいるかもしれない。
毎日そんな期待を胸に宿に戻るアナスタシアだが、未だにその思いは叶わずにいる。
「いかなきゃ……。」
暑さのせいか軽い立ち眩みがする。
それでもプリシアは宿に向かって歩きだした。
(姫様……いったいどこに。)
「キャッ!?」
ボーッとしていたプリシアは何かに弾き飛ばされ尻餅をついた。
「イタタタタ……。」
プリシアが顔を上げると屈強な男が3人で自分を見下ろしていた。
「あ、あの……す、す、すみません!」
慌てて立ち上がりペコリと頭を下げるプリシア。
「おいおいネェちゃん、なにしてくれてんだよ。」
「え?」
「え?っじゃねーよ!」
「あ、あの……。」
「天下の往来を余所見しながら歩いてんじゃねーよ!」
「す、すみません……。」
3人の男に詰め寄られオドオドするしかできないプリシア。
「なんだネェちゃん。この国のもんじゃねーな。」
「へぇ。異国の女も悪くねーな。それにえれー上玉じゃねーかよ。」
「キャッ!」
肩を捕まれた痛みで声をあげるプリシア。
酒臭い息を撒き散らす男達。
なんだなんだと周囲の人々が騒ぎだす。
「テメーらっ!見世もんじゃねーぞっ!」
中でも一番ガタイのいい男に恫喝され野次馬の何人かが顔を見合せながら去っていく。
「あの、私……。」
「ネェちゃんさぁ、ちょっと俺らに付き合ってくれよ。」
「そうそう。一緒に飲もーぜ。」
「たらふく飲ませてやるからよぉ。」
「こ、困ります!私っ!」
「いいじゃねーかよぉ。ほら、行くぞ!」
「痛っ!は、離して下さい!い、嫌っ!」
プリシアの腕を掴んで引っ張っていく男達。
「ど、どうする?」
「どうするってよぉ……。」
「誰かいきなさいよ!」
「お、俺に言うなよ。」
野次馬がザワザワと騒ぎだす。
「嫌っ!やめてください!離して!」
プリシアが身をよじって逃げようとするが男達は下卑ぴた笑みを浮かべながら離そうとはしない。
そこに、
「その手を離せっ!」
凛とした声が響いた。