姫様、到着
メーレの町に到着した二人は手分けしてアステリアを目指す準備にかかった。
つまり……。
「じゃ!私は剣を買いに行くからグレンは馬を調達してきてね!」
「へいへい……任せてくれ。」
「夜にあそこの料理屋で落ち合おう。」
「ああ。ちょっくら行ってくるわ。」
プラプラと手を振って雑踏の中に消えていくグレンを見送るとアナスタシアも自分の要件を済ませる為に歩きだした。
※※※※※
「なあ、アステリアまで行きたいんだが。」
グレンは馬小屋の世話をしていた老人に声をかけた。
「ん……お前さん馬をさがしとるのか?」
「ああ。俺ともう一人連れがいる。」
「二人か。ならこの2頭がいいじゃろ。お前さんエスナールは初めてじゃな。」
「ああ。わかるか?」
「その格好見りゃ誰でもわかるわい。そんな格好で砂漠を渡ろうなんて初めてエスナールに来た奴か、あるいは余程の馬鹿かじゃよ。馬だけに……なっ!」
老人がニカッと笑った。
「そりゃどうも。で、どうしたらいいんだよ?」
グレンは頭を掻きながら尋ねる。
「ふむ。お前さん運がええ。あそこに儂の倅がやっとる店がある。そこで砂漠を渡る準備をしていくとよいぞ。
」
グレンが老人の指差す方をみると、店員らしき男が満面の笑みで手を振っていた。
「まったく……至れり尽くせりで助かるぜ。」
「じゃろ?」
「馬はいくらだ?」
「2頭でこんなもんじゃな。」
「げっ……結構するもんだな。」
「いやいや。アステリアに着いたらうちと同じ名前の店がある。そこに2頭とも連れていけば買い取ってくれるんじゃよ。」
「ああ、そういうことか。」
成る程。
良くできている。
アステリアまで無事に馬を連れていけば改めて買い取り差額が馬の賃料になるわけか。
「わかった。それでいい。明日の朝また来るぜ。」
交渉が成立するとグレンは今か今かと老人の息子が待ち構える店へと向かうのであった。
※※※※※
「あっ来た来た。ってその格好は……。」
店に入ってきたグレンを一目見るなりアナスタシアは目を丸くした。
エスナールの民族衣裳に身を包んだグレンがアナスタシアの向かいに座る。
「お前こそどうしたんだよ。その格好は?」
「へへへ。実は……。」
剣を手に手に入れるために武具屋を訪れたアナスタシアだが、そこの店主に言いくるめられグレンと同じくエスナール王国の女性達が纏う服を買わされたらしい。
「ま、まぁ……これで準備万端ってことよね。」
アナスタシアは手を叩くと苦笑いしながら言った。
「ああ。明日の朝に馬を取りに行くぞ。」
「うん。」
運ばれてきた料理を食べ終えると、二人は宿へと向かい明日に備えてその日は体を休めることにした。