姫様、向かう
「色々とありがとう。助かりました。」
アナスタシアは国境兵達に礼を述べる。
「ああ、二人とも気を付けてな。」
隊長が二人と握手を交わしながら言う。
「さて、そろそろ行くか。」
「うん。」
グレンの言葉にアナスタシアが頷く。
「グレンもその気になったらいつでも来いよ。俺が兵士に推薦してやるからな。」
「はっはっ。あぁ、気が向いたらな。」
二人はもう一度国境兵達に礼を言うと渓谷に架かる橋を渡り始めた。
「いざ、エスナールへ!……か。」
「うん。ジイとプリシアも心配してるだろうし早く合流しなきゃ。」
「だな。で、この1週間何があったんだよ?」
「あ~。話すと滅茶苦茶長くなるから追々話すよ。」
「そうか。お前……。」
グレンがアナスタシアを見つめる。
「ん?なに?」
横を歩くアナスタシアも見つめ返す。
「あ、いや……なんか変わったか?」
「え?どういうこと?」
「いや、なんとなくなんだが……まあいいか。」
そうこうしていると、橋を渡り終えエスナール王国領へと足を踏み入れる。
「ここで話を聴く。」
「二人だな。入国の目的は?」
エスナール人特有の浅黒い肌と独特の装いをした国境兵に迎えられた。
「旅の途中なんだ。西を目指して。」
「旅人か。二人でか?」
「いや、先に二人入ってんだ。1週間前に爺さんと若い娘が通らなかったか?」
「…………ああ!あの二人か!確かアステリアに行くと言っていた。」
兵士の一人が思い出す。
「その二人と一緒に旅をしてるんだ。」
「なるほどな。よし、通っていいぞ。」
「ありがとう。」
「ようこそエスナール王国へ。」
「それで、そのアステリアってのはここからどうやって行けばいいんだ?」
グレンの問いに兵士が答える。
「ああ、地図はあるか?…………ふむ、ここから西に少し進むと砂漠地帯に入る。そこからは北西に向かって行けば王都アステリアだ。」
「砂漠かぁ……。」
アナスタシアが地図を見つめて呟く。
「砂漠は初めてか?」
「うん。見るのも歩くのもね。」
「歩くか……それは無理だな。我々ですら王都まで歩くとなると大変な事だ。」
「じゃあどうすれば……。」
「ここにメーレという町がある。」
兵士が地図を指差す。
「ここで準備をするといいだろう。その格好じゃあこの国では辛いぞ。」
アナスタシアとグレンの姿を見ながら兵士が言った。
「メーレで馬を調達してアステリアを目指すといい。砂漠を渡る方法も教えてくれるはずだ。」
「そうか。わかった、ありがとう。」
「爺さん達もその方法でいったのか?」
「ああ、たぶんな。同じ事を教えたからな。」
アナスタシア達は兵士に礼を言うと関所を出た。
「よしっ!行きますか!」
「おう!」
二人は西を目指し歩きだした。