姫様、話す
「って事で俺だけこちらに残って二人は先に王都に向かったってわけだ。」
グレンがかいつまんで現状を説明し終えると、先程の兵士がトレイに食事を乗せて戻ってきた。
「ほら、有り余りの物だがどうだ?」
アナスタシアはテーブルに置かれた食事と兵士を交互に見る。
「ありがとう。遠慮なく頂きます。」
「はっはっは。ああ、御代わりもあるからな。」
気さくな兵士はアナスタシアが食べ始めると自分も椅子に座った。
「それにしても、運良く巡回中に見つかって良かったなぁ。運んできた奴らに聞いたら、なんでも草原に倒れてたとか。」
「う、うん。まあ……。」
(グレンはどこまで話してるんだろう?)
刺客の事や魔導書の事は黙っておいた方がいいかもしれない。
そう思い、咄嗟に誤魔化すアナスタシア。
「え、えっと……ここに向かって歩いてたんだけど……途中で魔物に襲われちゃって。」
「なんと!?で、どうしたんだ?」
「一応追っ払う事は出来たんだけど……。」
「自分も力尽きたってわけか。成る程、それでそんなに傷を……。」
兵士は納得したのかウンウンと頷いている。
「怪我の具合はどうだ?薬や包帯が必要なら。」
「ありがとう。でももう大丈夫。」
「そ、そうか?ならいいんだが……遠慮はいらんぞ。」
「うん。本当に大丈夫だから。それより、運んでくれた人達にお礼が言いたいな。」
「ああ、それならそろそろ交代の時間だから戻ってきたら言うといいさ。」
「うん!」
と、入り口の方から声が聴こえた。
「隊長~!すみません!ちょっと来てもらえますか~!」
「ん?なんだ?」
隊長と呼ばれた男は席を立つと外へと向かった。
部屋にはアナスタシアとグレンが残される。
「良い人だね。」
「ふっ。なんでもお前と同じ年頃の娘がいるらしいぜ。」
「へ~。ずいぶん仲良くなったんだね。」
「それより……。」
グレンがアナスタシアを見つめる。
「さっきの話だが……。」
さっきの話。
草原で倒れていた理由だろうか。
「まさか本当に魔物にって訳じゃねーよな。」
「うん。それなんだけど、話すと長くなるからジイ達の所に向かう途中にでも話すよ。」
「わかった。だけどお前、もう出発しても……。」
「大丈夫。」
「はいはい。わかったよ。なら早速行くとするか。」
「うん!」
二人は席を立つと外へと向かった。




