姫様、再会する
アナスタシアが目を覚ますとベッドに寝かされていた。
(ここは……。)
開け放たれた窓からは心地よい風が吹き込んで頬を撫でる。
ゆっくりと身体を起こし辺りを見渡す。
「部屋?宿か……。」
しかし宿にしては殺風景な部屋だ。
ベッドが3つと部屋の隅に机と椅子があるだけだ。
その机の上にはアナスタシアの荷袋と身に付けていた肩当てとマントが置かれている。
ベッドの横にあった自分の靴を履くと立ち上がる。
「うっ……。」
わき腹に僅かに痛みが走った。
(まだ本調子じゃないか。でも動けない程じゃないか。それより……。)
まずはここが何処かを調べなくては。
アナスタシアは机の上の肩当てとマントを手早く身につける。
「剣は……。」
部屋を見回すが見当たらない。
「仕方ない。まあ、なんとかなるか。」
アナスタシアはそっとドアを開けた。
部屋を出ると廊下が伸びており両隣に1部屋ずつ、向かい側にも3部屋あった。
部屋から顔だけ覗かせ廊下の先に目を向ける。
(人の声?)
微かに聴こえてくる会話するような声と物音。
どうやら複数の人間がいるようだ。
「行ってみるか。」
廊下に出ると静かに歩きながら声のする方に向かう。
次第にはっきりと聴こえてくる人の声。
(男の人……。)
角まで来るとヒョコっと顔を出して覗いてみる。
「あっ!」
思わず声を上げてしまうアナスタシア。
「ん?よう!目が覚めたか!」
よく見知った顔。
「グレン!!」
グレンが鎧を着た男と親しげに話をしていた。
「なんでグレンがっ!?」
目を丸くして問いかけるアナスタシア。
「なんでって……お前を待ってたんだよ。むしろこっちが聞きたいぜ。」
「え?」
「お前今まで何してたんだよ?」
「え?わ、私?」
質問を返され戸惑うアナスタシア。
するとグレンと話していた男が割って入ってきた。
「まあまあ。まだ目覚めたばかりなんだ。そう問い詰めてやるな。」
アナスタシアのに向かって男が微笑む。
「お嬢さん、目が覚めて良かった。まずは掛けたらどうだ。」
椅子を引いて座るように促す男。
「は、はぁ……。」
どうしたものか迷うアナスタシア。
どうやら悪い人達ではなさそうだが。
「つもる話もあるだろうしな。丸一日寝ていたんだ。腹も減っているだろう。」
「丸一日!?」
そう言わた途端、アナスタシアのお腹が鳴り空腹を訴えだした。
「あっ……。」
アナスタシアが顔を赤く染める。
「はっはっはっ!昼飯の残りで悪いが今用意してやるから座って待っていなさい。」
「う……は、はい。」
アナスタシアは大人しくグレンの向かい側に座った。
「で!どういうことなのさ?」
鎧の男が出ていくとアナスタシアがグレンに再び問いかけた。