Interlude
国境の関所。
グレンは今日も兵士達と食事を共にしていた。
「なぁ。兵士に志願してみないか?俺が推薦状書いてやるからさ。」
「またその話かよ。だから俺はそんなつもりはねぇって……。」
「しかしだなぁ。」
ここ数日ずっとこの調子だ。
関所の警備兵長はこの旅の武術家をいたく気に入り勧誘を繰り返している。
「俺はそういうの向いてないんだって。」
パンを齧りながらグレンが答える。
向かいに座る兵長は懲りずに言った。
「そんなのは慣れるもんさ。お前は腕が立つ!その力、この国の為にだなぁ。」
グレンはやれやれといった風に肩を竦めた。
この1週間すっかり警備兵達に馴染んだグレンは修行がてら共に周辺の巡回に同行したり、時には共に出没した魔物を退治に出掛けたりしていた。
そんな中で兵長はグレンの強さに目を付け勧誘を続けているのである。
「気持ちはありがたいが目的があるんでな。」
「目的ねぇ……。それだって、その……なんだ……お前の言う娘剣士とやらも……。」
兵士長は気を遣ってか言いづらそうに口篭る。
「ははっ!あいつがそんな簡単に死ぬタマかよ。そのうちヒョッコリ現れると思うぜ。」
「う~む。だといいがなぁ。」
人の良い兵士長は部下達にグレンから聞いたアナスタシアの特徴に似た人物がいないか巡回の際にそれとなく探してやるようにこっそりと言い伝えているのだ。
しかし未だにそれらしき人物の情報は上がってこない。
「ふむ。そろそろ巡回に行った連中が帰って来る時間か。」
「今日は魔物も盗賊もねーし。はぁ……退屈だぜ。」
「馬鹿者っ!そんなのは出ないに越した事はないのだ!」
「そりゃあ平和が一番だけどさ。」
「そうだとも。平和がいちば……。」
兵士長が言いかけると俄に外が騒がしくなった。
「ん?なんか騒がしいな。」
「う、うむ。そうだな。巡回組が帰ってきたか。」
二人は席を立ち外に出る。
「なんだ……やはり帰ってきたのか。」
兵士長は巡回から帰って来た兵士達の元に歩いていく。
「ご苦労だったな。どうした、何やら騒がしいようだが。」
「あっ!兵士長!グレンはいますか?」
「ん?俺がどうかしたか?」
騒ぎが気になったのかグレンも兵士長に続いてやって来た。
「おお!いたかグレン!実はな……。」
「ん?」
兵士は背後に控える馬の方を向く。
グレンも連れてて目を向けると、馬の背に人が1人乗せられていた。
ぐったりと力ない様子で馬の背に身を預けている。
「なんだ?怪我か…………なっ!?」
グレンが目を見開き驚く。
「ナーシャ!!」
馬上の人物はグレンの待ち人、アナスタシアであった。
グレン