姫様、決着
暴風が去り長閑さを取り戻した平原。
そこに立つ人影が1つ。
「………。」
エドワードはわき腹に手を添える。
掌に血がついた。
左わき腹から右肩に向かって服が切り裂かれている。
アナスタシアが放った斬撃だ。
自らも闘気を纏うことで防いだが相殺しきれなかったようだ。
無言で辺りを見回すと少し離れた場所にアナスタシアが倒れているのが見えた。
(まさか、ここまでやるとはな。)
アナスタシアの元に歩いて向かう。
(手加減したからこの程度ですんだが、完全解放していたら私も無事では済まなかったかもしれん。)
「たいした娘だ……。」
地に倒れ伏すアナスタシアを見下ろしながら呟く。
どうやら息はあるようだが完全に気を失っている。
「…………。」
エドワードは自分が心なしか安堵していることに驚いた。
「ふっ……。」
自嘲気味に嗤うとアナスタシアが握っている荷物袋を取り上げた。
飛ばされる寸前に掴んだのだろう。
中を改めると……あった。
「ふぅ。ようやく任務完了か。」
追い求めた魔導書の入った箱。
だいぶ回り道をしたがようやく取り戻すことができた。
「さて、剣は……。」
手放してしまった愛剣を探さねばならない。
それ程遠くには飛ばされていないはずだ。
「せっかく命拾いしたのだ。つまらない死に方はするなよ。」
アナスタシアに言葉をかけると踵を返す。
「…………彼方か。」
意識を集中すると剣の魔力を感じる。
エドワードは己の愛剣を回収するために歩きだした。