Interlude
エドワードは一度関所から離れ丘陵の頂上へと引き返すことにした。
近くの木に馬を繋ぐとその幹に凭れるように腰を下ろし考えにふける。
(どうやらあの娘はまだ此方側にいるらしいな。)
アナスタシアがまだ国境を越えていないことに安堵する。
もしかしたらあの時割って入ってきた修道女が連れていったのかもしれない。
(だとすると、厄介だな。)
もしあの修道女が行動を共にするようなことになればアルマデルの奪還は困難になる。
(そうなれば、一度"聖都"に戻る事も考えねばなるまい。)
エドワードは脇腹をそっと抑える。
(傷は……治ったとは言えんか。)
これからどうするべきか?
あの娘を探しに行くか?
ならば再び森に戻らねばならない。
見つけたとしても一人とは限らない。
修道女と一緒なら戦闘は避けれない。
今の状態では勝ち目はないだろう。
「まったく……厄介な事になったな。」
その後もエドワードはどうするべきか考えを巡らせ、漸く結論をだした。
「よし、行くか。」
馬のあたまを撫でると背に跨がった。
馬は小さく嘶くと関所とは反対方向へ走り出した。
「やれやれ。すまんな、行ったり来たりと忙しない。」
詫びるようにエドワードは馬の首を撫でた。
エドワードの出した結論は、あの丘陵の上からしばらく関所を見張るというものであった。
幸い地図を見ると南に小さな村がある。
今朝急いで出立してきた町に戻るよりもずっと近い。
エドワードはその村に野営の準備をするために向かう事にした。
(あの場所なら眼下に広がる地形が監視しやすい。どの方角から娘が来たとしても気づけるだろう。)
見つけた後に奪還に向かうかしばらく追跡し様子をみるか判断すればいい。
(ふっ。まさかこんな事になるとはな。)
日が暮れる前に馬の背に荷物をぶら下げてエドワードは再び丘陵に戻ってきた。
「ご苦労だったな。ほら、ゆっくり休め。」
野営地を決めるとエドワードは馬に水と餌を与えた。
「ふむ。ここなら下からは死角で感づかれることもあるまい。」
焚き火を起こし自らも食事をとるエドワード。
「ふっ。皮肉だな。任務が終わったら自然の中でのんびり過ごそうと思っていたのだが。」
エドワードは自嘲気味に笑った。