Interlude
国境へと続く路を馬を駆るエドワードが疾走る。
(この先はエスナール王国への関所。奴らはアルマデルをエスナールへ持ち込むつもりだったに違いない。)
だからこそ国境を越える前に追いつきたい。
(あの3人を倒し、娘を追いかけてから丸1日経つ。国境を越えられてしまえば何処に向かったのか突き止めるのは難しくなる。)
娘の居場所がわからない以上、仲間を捕らえ待ち伏せするのが上策。
あわよくば、交渉材料として血を流さずにアルマデルを奪還できるかもしれない。
(気が進まんな……。)
任務の為とはいえ、人質をとるなどという手段をエドワードは好まない。
好まないが……。
(優先すべきは任務。その為なら私の矜持など!)
前方に小高い丘が見えてきた。
国境への路は丘を越えさらに向こう側へ延びている。
(あれを越えれば!)
エドワードは馬の腹を軽く蹴る。
馬は大きく嘶くと一気に丘を登っていく。
「ほう……これは。」
頂上からの眺めはなかなかに絶景だった。
丘を下った先には大渓谷が見える。
(あれが国境の関所か。まずは関所で奴らが通ったかを確かめねば。)
丘陵を一気に駆け下り国境に向かって馬を走らせる。
「さて……。」
関所に到着するとエドワードは馬から降りてさっそく兵士に声をかけた。
「失礼、聴きたいことがあるのだが。」
「ん?通行許可か?それならあちらに……。」
兵士が検問所を指差し答える。
「いや、実は人を探していているのだ。」
「人探し?」
「うむ。エスナールに向かうと言っていたのでここを通ったか確かめたくてな。」
「ほう……。」
兵士がやや疑わしげにエドワードを見る。
「ふぅ。実は……私は或る富豪に仕える身なのだが……。」
変に怪しまれても厄介だと判断したエドワードは事情をでっち上げて探りを入れてみることにした。
「その家の奥方様がエスナールの出身なのだ。」
「ほう、それで?」
「これは……あまり大きな声では言えないのだが、先日旦那様と奥方様が……まぁ、その……些細な事で喧嘩をしてしまってな。」
「ほうほう。なるほど、それでその奥方様とやらが家出したと?」
兵士が興味津々とばかりに言う。
「うむ、そうなのだ。それで旦那様が随分心配されていてな。私が連れ戻すために心当たりのある場所に使いを送っておるのだ。」
「なるほどなぁ~そりゃ難儀だな。」
どこか楽しそうな兵士。
「へ~。金があっても悩みは俺らとかわらないんだなぁ。で、いつ頃の事なんだ?」
「ああ、昨日から今日にかけてそれらしき人物は通らなかっただろうか?」
「一人でかい?」
「いや、お付きの者が数名いたはずだ。」
「そうか。どれ、記録を見てきてやる。少し待ってろ。」
「それは助かる。」
兵士は詰所の方へと歩いていく。
(我ながら……よく話が作れたものだ。)
エドワードは人知れず苦笑した。