Interlude
一週間前。
「ぐっ……がはっ……。」
脇腹からの出血部分を手で押さえながら森の中を走るエドワード。
(信じられん……なんなのだアノ尼僧は。)
アナスタシアに止めを刺す直前、突如現れたグリッドによって深手を負わされたエドワードは一時撤退を余儀なくされた。
「はぁ……はぁ……。」
後ろを警戒するが追って来る気配はない。
エドワードは走るのをやめて、木の根本に座り込んだ。
幹に持たれながら荒い息を整える。
腹部から手を離すと、掌にベットリと血が着いていた。
(奴はいったい……。)
エドワードは今しがた起こった事を思い返す。
凄まじい強さだった。
自分が連戦で消耗していたのとは無関係に強かった。
任務を果たせずに死ぬわけにはいかない。
忸怩たる思いでその場から離脱し今に至る。
「うぐっ……致し方ない。」
エドワードはよろよろと立ち上がると森を抜けるべく歩きだした。
(兎に角、今の状態では任務遂行は不可能。傷の手当てをせねば。幸い、アルマデルを託された娘も重傷を負っている。すぐには動けまい。)
身体を休めるため、最寄りの町へと向かうエドワード。
重い足取りで森を抜けた頃には日が落ちかけていた。
「さて、どうするか……。」
国境に続く路へと出たエドワードがどちらへ進むか考えていると、遠くから規則的な音が聴こえてきた。
「ん?」
そちらに目を向けると、灯りが1つ此方へ向かって来る。
「あれは……馬車か。」
それは、松明を持った御者が操る馬車だった。
馬車はエドワードの目の前を通りすぎると、少し離れた場所で止まった。
(……?なんだ?)
場所の荷台から男が1人降り立ちエドワードに向かって走ってくる。
「おーい!あんた!大丈夫か!?」
男は側までくるとエドワードの姿に目を丸くした。
「あんた!血塗れじゃないか!?いったい何が……!」
なんと説明したものか思案するエドワード。
「ああ、実はこの先にある森で野生の獣に襲われてな……。」
「そりゃ酷い!すぐに医者の所に連れてってやるからな!」
(ふぅ……僥倖だな。この場は有り難く……。)
エドワードは男に肩を借りながら場所に乗り込んだ。
「かたじけない。」
「気にしなさんな。ちょうど俺等もこの先の町に向かってたんだ。」
エドワードは荷台で揺られながら、これからいかにしてアルマデルを奪還するかを考えるのであった。