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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
256/281

姫様、去る

翌朝。


「じゃあ……いろいろお世話になりました。」


ペコリと一礼するアナスタシア。


「まったくだ。気紛れで助けてみれば、まさか一週間も居座られるとはな。」

「ハハハ……。」


アナスタシアは渇いた笑い声を漏らす。


「あの……。」

「ん?」


グリッドを見つめながらアナスタシアが言った。


「いつか……いつかまたここに来てもいいですか?」

「は?何故だ?」

「私、また先生に修行をつけてもらいたいんです!今度はもっと本格的に!」

「…………ふぅ。」


グリッドは煙草を取り出しと口に咥え火を着ける。


「あ、あの……。」

「ふぅ~。それは無理だな。」

「え!?」


途端にアナスタシアの表情が曇る。


「駄目……ですか……。」


そんなアナスタシアを見下ろしながらグリッドが言う。


「次にここに来ても私はいない。」

「え?」

「世界中を旅してるんだ。そろそろ他の地へ行こうかと思ってな。」

「旅……?」

「ああ。だからここに来るのは勝手だが私はいない。」

「そう……ですか。あっ!じゃあ私達と……。」

「断る。」


アナスタシアの言葉を遮り言い放つグリッド。


「う~~。」

「私には私の目的がある。」

「ちぇっ!」

「大きな街に行けば剣術道場なんていくらでもあるだろ。そんなにやりたきゃそこで……。」

「それじゃ駄目なんです!」


今度はアナスタシアがグリッドの言葉を遮った。


「先生に教わりたいんです!」

「たいんですって……何故だ?」

「だって先生は……。」


森で助けられた時から思っていた。

グリッドの闘う姿に見とれてしまった。

この一週間でグリッドの底知れぬ強さを感じた。

もしかしたら、この人は自分の目指す先にいるのではないか。


「ふぅ……。」


煙を吐き天を仰ぐグリッド。


「まあ、そうだな。もし……。」

「もし?」

「もし縁があって何処かで会うことがあれば……。」

「あれば?」

「その時は修行をつけてやるのも吝かではない。」

「ほ、本当に!?」


グイっと顔を寄せるアナスタシア。


「えぇい!鬱陶しい!」

「約束!約束ですよ!」

「はいはい。」


面倒臭そうに返事をするグリッド。


「まぁ、その時までお前が生きてればだけどな。」

「う~。なんて嫌な事を……。」

「バカ。お前は絶賛狙われ中だろうが。」

「あ……。」


アナスタシアは目下自分に迫る危機をようやく思い出した。










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