姫様、苦戦する
「火の矢!……火の矢!」
続けざまに火術で攻めるアナスタシアだが、魔物の腕に振り払われてしまう。
「ぐっ……駄目か!」
アナスタシアは奥歯を噛み締める。
魔物はアナスタシアの方を向くと6本の足を激しく動かし突進してきた。
アナスタシアは剣を振りかぶると魔物の頭目掛けて正面から"闘気斬"を放つ。
しかし、それも鎌状の腕で防がれてしまう。
(やっぱり……関節部分じゃないと斬り落とせないか。)
「ーー!?」
魔物はアナスタシアとの間合いを詰めると、アナスタシアを両断しようと鎌腕を一閃した。
「うっ!!」
それを剣で防ぐアナスタシア。
しかし、予想以上の威力に脚の踏ん張りが効かず吹き飛ばされる。
「きゃっ!!」
倒れたアナスタシアに追い討ちをかけるように、魔物が振り上げた両腕を振り下ろす魔物。
ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!
アナスタシアは地を転がりながら間一髪で鎌を避ける。
「このっ!」
素早く起き上がるとアナスタシアは大きく跳躍し魔物に斬りかかった。
「はぁぁ!!」
狙うは腕の関節。
ここなら斬れる!
アナスタシアの渾身の跳び混み斬りは狙い通りに魔物の左腕を真ん中から切り落とした。
(やった!)
魔物はつんざく様な鳴き声を上げると残った右腕を滅茶苦茶に振り回す。
アナスタシアは着地と同時に後方に数回跳んで、魔物の間合いから離れる。
「はぁ……はぁ……これで後は……。」
もう1本の腕を落とせば。
そう思った矢先、魔物の左腕の切断部分がモゾモゾと蠢く。
「嘘でしょ……。」
思わずひきつった笑みを浮かべるアナスタシア。
魔物が一際大きく甲高い鳴き声を上げると、ズボッと切断部分から斬り落とした鎌部分が生えてきた。
(足だけじゃなく腕も……やっぱり魔術で燃やすしかないか……。)
アナスタシアは的を絞らせないように走りながら魔物に向けて手を翳す。
だが……。
(いや、この距離じゃまたさっきみたいに弾かれるだけだ。)
もっと近接した状態から当てないと。
「でも、どうしたら……。」
走りながら思考する。
接近戦で魔術を放つには剣を右手だけで扱わなければならない。
しかし、あの魔物の一撃は片手で受け止められるものではない。
(どうすれば……考えろ……考えろ……。)
アナスタシアは必死に打開策を考えた。