姫様、ボロボロ
バラバラと木片を撒き散らせながらアナスタシアが立ち上がる。
「っ痛ぅ……。」
「ほら、どうした?もう終わりか?」
「ぐっ……まだまだぁ!」
アナスタシアはグリッドに向かって走ると大きく跳躍し剣を振りかぶる。
「はぁっ!!」
アナスタシアの渾身の一撃は、僅かに身体を捻ったグリッドにかわされ呆気なく空を斬る。
(これならっ!)
着地したアナスタシアが回転し斬り払う。
「くっ!?」
しかし、ステップを踏むように軽く後ろに跳ねるグリッドを捉えられない。
それでも食い下がり接近戦をしかけるアナスタシア。
大きく息を吸い、気合いと共に連続で斬撃と刺突を繰り出す。
(なんでっ!?)
攻撃の手を休めずにアナスタシアは内心で驚愕する。
これだけの攻撃を重ねても掠りもしないのだ。
本当に盲目なのかと疑いたくなる。
「てやぁ!」
深く踏み込むと今度はグリッドの足元から斬り上げる。
ビュウっと風を切る音が鳴る。
大きく空振りしてしまったアナスタシアの胴がガラ空きになる。
(しまった!)
そう思った時には腹部に衝撃が走っていた。
「ぐふっ!」
グリッドの掌底をくらい後方に吹き飛ぶアナスタシア。
地面に激突する寸前に受身をとり地面を転がる。
なんとか立ち上がりグリッドを睨む。
「はぁ……はぁ……くそぉっ……!」
涼しげに佇むグリッド。
アナスタシアは剣の間合いの外に立つグリッドに向けて左手を翳すと魔力を集中させる。
だが……
「お前は学習しないな。」
「え!?」
瞬間移動かと思う程の速さで目の前に迫ったグリッドがアナスタシアの胸ぐらを掴む。
フワッと身体が浮く感覚を感じた次の瞬間には背中に衝撃を受ける。
グリッドが近くに生えていた大木に投げつけたのだ。
「がはっ!」
目がチカチカして白く霞んだ。
大木は大きく揺れ木の葉が降ってくる。
鳥達が一斉に飛び立つ声を聴きながらアナスタシアは地面に崩れ落ちた。
「やれやれ。よく今まで生き残れたな。運だけはいいらしい。」
頭上からのグリッドの声がする。
ザクッと顔の真横に手斧が刺さる。
「さて、この僅かな時間でお前は何回死んだかな?」
グリッドの言葉を理解する前にアナスタシアは気を失った。