姫様、目覚める
「はっ!?」
アナスタシアが目を覚ますとベッドに寝かされていた。
「こ……こ……は?」
アナスタシアが首だけを動かし辺りを見回すと部屋の隅に机がある。
窓は半分開いておりカーテンが風に揺れていた。
(生きてる……。)
アナスタシアは身体を起こそうとする。
「つっ……痛たた……。」
身体に鈍い痛みが走った。
ゆっくりと身体を起こしベッドの縁に腰かける。
「これは……?」
改めて己の身体を見ると下着姿である。
両腕と腹部、両脚に包帯が巻かれている。
(誰かに治療してもらったのか……。)
アナスタシアは記憶を辿る。
確か自分は森の中でエドワードと闘っていたはずだ。
オッグスの死、エドワードとの対峙、そして敗北……。
(そうだ!誰か……そう、修道女が現れて……!)
エドワードと突如現れた修道女との闘いの途中で気を失った事を思い出すアナスタシア。
「って事は……。」
ガチャ。
部屋のドアが開いた。
反射的にアナスタシアが視線を向けると、
「ん?なんだ、やっと目が覚めたか。」
件の尼僧が立っていた。
「え……あ、あの……。」
「三日もベッドを占領しおって……。まあいい、とっとと服を着ろ。」
「あ……は、はい。」
アナスタシアが辺りを見渡すと机の上に自分の服やショルダーガード、マント、剣が置いてあった。
尼僧はクルリと背を向け部屋を出ていった。
アナスタシアはとりあえず服を着ると尼僧を追って部屋を出た。
「ふむ。動けるようにはなったな。」
火のついていない暖炉の前に置かれたテーブルの上には料理が並んでいた。
その前に座った尼僧がアナスタシアを一瞥する。
「あの……貴女が助けてくれたんですよね。ありがとうございました……。」
アナスタシアが頭を下げて礼を言う。
「まあ、行き掛かり上な。」
「は、はぁ……。」
すると、アナスタシアのお腹がグ~ッとなった。
「あっ…………。」
アナスタシアの顔がみるみる赤くなる。
「あ、あの……これは……その!」
「ふぅ。ほら、座れ。」
取り繕うとするアナスタシアを遮り、尼僧が向かい側の椅子を勧める。
「あ……はい……あ、ありがとう。」
アナスタシアが座ると尼僧が台所に行き、アナスタシアの食器とミルクを持ってきてくれた。
「ど、どうも……。」
「話は朝食の後だな。」
二人は黙々と食事を摂る。
(あ……美味しい……。)
三日ぶりの食事はアナスタシアの空腹の身体に沁みるのであった。