Interlude
木漏れ日の射す森の中には不似合いな金属音が鳴り響く。
「はぁ!!」
オッグスが気合いと共に振り下ろした剣を細剣で捌き突き返すエドワード。その切っ先を見据えながら身体を捻り遠心力の乗った斬撃で斬り払うオッグス。鉄の胸当てを削られながらも至近距離からの横凪を避けられず自らの細剣で受け止めたエドワードが踏みとどまれず吹き飛ぶ。
(やるな……この男、剣の腕はなかなかではないか。)
エドワードは素直に称賛する。疲労しているとはいえ、攻めきれない。防具に守りを任せたオッグスの剣術はエドワードの攻撃に怯まず間合いを詰めてくる。
(私の消耗を感じて攻めに徹する気か……。)
「せいっ!」
崖に追い詰めたエドワードに休む間を与えずオッグスが斬りかかる。
(攻めろ!奴はここまで来るのに確実に消耗している。攻め続ければ……活路はある!)
目の前の敵と闘うと腹を括ったオッグスの剣技は冴え渡っていた。自分でも驚く程に冷静に相手の受け攻めを分析できる。
"十字斬り"
「!?」
猛烈な攻め防ぎきれずエドワードの胸に真一文字の斬り傷ができる。
(浅いっ!まだまだっ!)
オッグスは好機とみて大きく一歩踏み込む。
「誤ったな。」
(……え!?)
エドワードが呟くのを聴いた気がした。次の瞬間背後に迫る死の気配を感じる。
"回刺の觜"
「ごぶぉぉ!!」
オッグスが崩れ落ちた。
「調子にのり過ぎたな。私の体力を削り続ければ万が一があったやもしれんが。」
「ぐ……ぐぁ……。」
痛みに気を失いそうになる中、エドワードの言葉が頭に響く。
「串刺しにするつもりだったが……瞬時に身体を捻りかわしたか。……見事だな。」
エドワードの言う通り、急所を貫かれるのは避けたものの脇腹は深々と斬られてしまい重傷には変わりない。
「同じ剣士として、ケジメはつけんとな。」
エドワードが剣の切っ先をオッグスにむける。
(剣士か……私は剣士失格だな。最期まで不様に……。)
ヨロヨロと剣を支えに立ち上がるオッグス。そんな彼に歩み寄るエドワード。
「さらばだ。」
エドワードの細剣がオッグスの身体を貫いた。
「がはっ……。」
口から血を吐きながらオッグスがエドワードに倒れかかる。それを両手で受け止めるエドワード。その瞬間、濁りかけていたオッグスの瞳に僅かに光が戻る。
「!?」
オッグスは素早くエドワードの懐に手を差し込み何かを取り出すと、渾身の力で彼を突き飛ばした。
「なにっ!?」
完全に不意をつかれるエドワード。オッグスは唇の端を上げて微かに笑うとそのまま崖の下に向かって飛び降りた。慌てて崖に駆け寄るエドワードの目に、大きな水飛沫が見えた。
(まさか……!)
懐を探ると、アルマデルの魔力を追跡する魔道具がなくなっていた。
「…………やられたな。」
眼下の濁流を見ながらエドワードが呟いた。
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