Interlude
ゴクリと喉を鳴らすオッグス。ゆっくり振り替えると、そこには最悪の人物が立っていた。
「あ……あ……。」
言葉が出ないオッグスにエドワードは一歩歩み寄る。
「ずいぶん手こずらせてくれたものだ。貴様等が抗えば抗うだけ犠牲が増えるのだぞ。」
静かに、諭すように語りかけるエドワード。
(なんとか……なんとかこの場から逃げなくては。)
ジリっとオッグスの足元が鳴る。それを見たエドワードは懐から何かを取り出した。
(な、なんだ?)
エドワードの手には掌に収まる大きさの丸い物が握られている。
(じ、磁石……?)
それは一見、多くの旅人が持っているなんの変哲もない方位磁石のようだった。しかしそれがなんだというのか。怪訝そうなオッグスにエドワードが言った。
「これは、ある種の魔力のみに反応する魔道具でな。一定の範囲内なら貴様の持つアルマデルの魔力を感知しその方角を示してくれる。ずいぶん厳重に隠しているようで苦労したがな。」
「そ、そんな……。」
「わかるな?逃走は無意味だ。」
まるで出来の悪い生徒に教えるように語るエドワード。
「くっ……くそっ!」
「最後だ。それをこっちに渡せ。」
そうすれば見逃してやる、そう言下に含んだ言葉だった。渡せば助かる。死ななくていい。そんな考えがオッグスの脳裏に、
「舐めるなぁ!!」
僅かたりとも浮かばなかった。オッグスは腰の剣を抜き構える。
「オッグス=トーチス……参る!」
(この男……。)
エドワードは目を見張る。隙のない良い構えだ。立ち上る闘気、放たれる殺気も並の剣士ではない。
「なるほど……先程の言葉は撤回する。貴殿の誇りを傷付けた非礼を詫びよう。」
スゥッとエドワードも細剣を構えた。
「先刻、名は名乗ったな。私も同じ剣士としてお相手する。」
風が流れ木々の葉が音を奏でる。その刹那、二人の剣士の壮絶な斬り合いが始まった。