Interlude
「はぁはぁはぁはぁ……。」
オッグスは蔦の巻き付いた木に手をつき息を整える。走ってきた方向を振り向くが幸い追っ手はまだ来ない。
(今のうちに……。今のうちになるべく遠くへ……。)
森の中に入ってかなり経った。オッグスはその場に腰を下ろし木に凭れかかる。
(ナーシャさんは……無事だろうか……。)
目を瞑り考えを纏める。これからどうするか?いつまでも森の中に隠れている事はできない。なんとかして国境を越えなくては。
(関所を通らずに渓谷を越えることは……。)
このまま森を西に進み橋を使わずに渓谷を越えられないだろうか。そう思い立つとオッグスは立ち上がり空を見上げ太陽の位置を確認すると、西に向けて歩きだした。
(情けないなぁ私は……。)
オッグスは歩きながらため息をつく。使命とはいえ逃げてばかりの己に嫌気がさす。ともに任務についていた仲間達は勇敢に戦い散っていった。リーダーだったオッグスに託して。
(みんな……すまない。なんとしてもコレを届けてみせる。)
弔ってやることも出来なかった仲間達。巻き込んでしまった者達への謝罪を心中で述べながら歩を進める。
(あと少し……あと少しなんだ……。)
どれくらい歩いただろうか。風が冷たくなった気がする。
「!!」
オッグスは駆け足になる。さらに進むと、微かに音が聞こえる。
(水……水の流れる音だ!)
前のめりになりながら走るオッグス。やがで前方に切り立った崖が見えてきた。とうとう国境の大渓谷に着いたのだ。しかし、
(どうすれば……。)
断崖から下を覗くと遥か下に水が流れている。前方を見るがとても跳べる距離ではない。
(しかたない。他の場所を探そう。)
オッグスは渓谷に沿って北上することにした。もしかしたら対岸まで狭まっている箇所があるかもしれない。或いは流れが穏やかな場所があれば崖を降りて泳いでわたれるかもしれない。藁にもすがる思いでオッグスは歩きだそうとする。
「これでは、対岸には渡れんな。」
「!?」
ふいに声をかけられオッグスは振り向いた。