姫様、急ぐ
「儂が重加の魔方陣を出現させるのが合図です。」
「わかりました。」
「ああ、異論ないぜ。」
「……わかった。それでいこう。」
暫し考えた後にアナスタシアが同意した。四人は昨晩、一つの作戦を考えていた。ヴォルフが立案した作戦は、襲撃者が強敵だった場合はオッグスと共にアナスタシアが馬車で国境越えを目指すというものであった。人選についてアナスタシアが疑問を呈したが、襲撃者と戦うにはヴォルフとグレンは外せない、プリシアは馬を駆れないということを説かれ納得した。
「儂らが足止めしている間に兎に角先へ進んで下され。」
「でも、皆はそのあとどうするのさ?」
「襲撃者を撃退できれば良し。仮に儂らより強かった場合は十分足止めできたら撤退します。その後、王都アステリアを目指します。」
「つまりアステリアで合流するってことか。」
「はい。ですので儂らが到着するまではアステリアにてお待ち下さい。」
「うーん。わかった。その時は皆が追い付くのをまってるよ。」
「ならばわかりやすいように……宮殿に一番近い宿でお待ち下さい。儂らはそこを目指しますゆえ。」
「まあ、先に飯の旨い店でも見つけておいてくれよ。」
「なるべく早く合流できるように急いで向かいますね。」
「けどまあ、それ程強い奴だったらの話だけどな……。」
※※※※※
「みんな……。」
アナスタシアは昨晩の事を思い出しながら馬に鞭を入れる。
「ナ、ナーシャさん!」
オッグスが幌から顔を覗かせ心配そうにアナスタシアに声をかける。
「みんななら大丈夫です!兎に角私達でも国境を越えましょう!」
「は、はい。うわっ!」
疾走する馬車が大きく揺れバランスを崩すオッグス。
「オッグスさん、国境を越えてからはどうするんですか?」
「は、はい。この馬車て砂漠越えは無理なので別の移動手段を使います。」
「砂漠地帯に入れば追手もそう易々とは追い付けないでしょう。」
「わかりました。兎に角急ぎましょう!」
アナスタシアがまたしても鞭を振るい加速する。今は只
皆を信じて先に進むしかなかった。