姫様とエドワード
「狙いはあっちか!」
アナスタシアがエドワードを追う。その前にグレンがエドワードの前に立ち塞がった。
「行かせねーよ。」
籠手を付けた両腕を構えるグレン。
「ぬっ!」
エドワードが走りながら腰の細剣を抜き、勢いのまま斬りかかる。
「しゃあ!」
「ふん!」
互いに攻撃を捌き合う中、
「はぁ!」
アナスタシアがエドワードに斬撃を繰り出す。アナスタシアを視界の端に捉えたエドワードが大きく後方に跳んだ。
「ほう、なかなか。」
エドワードが改めて四人を見る。
(剣士の少女と武術家の男……後ろの女性と老人は魔術師か。)
「グレン、いくぞ。」
「おう!」
アナスタシアとグレンがエドワードに仕掛ける。
(来るかっ!)
「せいっ!」
「はぁ!」
二人がエドワードを挟むように攻撃を繰り出す。
(私の死角を探るように動く……互いに隙を補い合うか。悪くない……。)
カキンッ!
アナスタシアの振り下ろした剣を細剣で受け止めるエドワード。
(くっ!なんて力だ。細剣、しかも片手でっ!)
自らの斬撃が意図も容易く受け止められ驚くアナスタシア。
「しゃあ!」
「ふん!」
アナスタシアの斬撃に合わせたグレンの蹴りもガードするエドワード。
(こいつ……!)
「ふっ。」
エドワードが細剣を操りアナスタシアとグレンを斬りつける。
「なっ!」
「くっ!」
瞬時に左右に跳び回避する二人。
「ぐぅ……。」
しかしアナスタシアの右太股から血が吹き出た。二人が離れたのを見計らいエドワードに向かって上空から火の玉が降り注ぐ。
「プリシア!姫様を!」
「はい!」
ヴォルフがプリシアをアナスタシアのもとへ走らせる。
「なにっ!」
後方に退くと思っていたエドワードが火炎弾を切り裂きながら自分に向かって走ってくる事に驚くヴォルフ。
「ジイッ!」
「爺さん!」
あっという間に間合いを詰めたエドワードがヴォルフを突き刺そうと細剣を突き出す。
「はっ!」
間一髪、魔術障壁が間に合い切っ先が胸の前で止まっている。
「ほう、厄介だな。」
「うぐっ。」
刺突を諦め、ヴォルフを蹴りながら反動で距離をとるエドワード。
「失礼、老人を足蹴にしてしまいました。」
「ふっ……まったくじゃ。年寄りは労らんか。」
「ジイッ!」
プリシアの治療を終えたアナスタシアが駆け寄ってくる。
(成る程、厄介なのはこの老人とあの女性か。特にこの老人、今のを防がれるとは……少し本気にならねばならんか。)
ヴォルフとアナスタシア、グレンとプリシア、どちらから仕止めるかエドワードは思考を巡らせた。