姫様、次の地へ
「で、次は何処いくか決めたのか?」
シャントを見送るとグレンが話を切り出した。
「うん。昨日地図を見て考えたんだけど……。」
プリシアがワクワクしながらアナスタシアの言葉を待つ。
「南西へ向かおう!」
「な、な、南西っ!」
プリシアが大袈裟に驚く。
「ほう、南西となるとエスナール王国ですか。」
「そうそう。」
「へぇ~どんな国なんですか?」
「エスナール王国は別名、砂の国。国土の大半が砂漠という地じゃよ。」
「砂漠か。また面白そうな所を選んだな。」
「でしょ。砂漠って本でしか見たことないからさ。」
「私もです~。」
ヴォルフはさっそく地図を両手で広げる。
「ふむ。南西に町がありますな。そこで準備するとしますか。そこから西に少し行けば国境の渓谷があります。」
「渓谷ですか?」
「そうじゃ。レザム渓谷にエスナール領への大橋が架かっておる。」
「じゃあとりあえず南西へ行くか。」
こうして一行は南西の町に向けて出発した。
※※※※※
四人はフェールズを出発し地図を頼りに南西へと歩を進めた。
道中は平和そのもので、アナスタシアとプリシアが旅に慣れてきたこともあり3日で目的の町「フース」に着くことができた。
「かんぱ~い!」
夜、四人は宿の近くにある酒場で夕食をとることにした。アナスタシアとプリシアは果実ジュースを、ヴォルフとグレンは地酒を注文し、並べられた料理を前に乾杯をした。
「なんてったって砂漠だからな。今のうちに食べて精をつけとかねーとな。」
「そんなに過酷なんですか?」
プリシアが少し心配そうに尋ねる。
「んー。そうだな。とにかく暑いのがなぁ。」
「そうじゃの。慣れない者には厳しい暑さじゃろうな。」
「私、大丈夫でしょうか……。足を引っ張らないといいんですが。」
プリシアがアナスタシアを見ると、ステーキを切り分けながらアナスタシアが答える。
「まあ大丈夫じゃないかな。住んでる人がいるんだし。」
「うーん。そう言われるとそうなんですが。」
「そう心配するでない。その為の準備をこの町で買い物をしていこうというのじゃ。」
「準備ですか?」
「ふむ。例えば直接日差しを浴びぬように日除けのローブが必要じゃな。」
「あ~。本で見たことある。」
その後も砂漠を旅する為のあれやこれやを話した四人は
宿に戻ろうと席を立つ。
「失礼。つかぬことを聞きますが、あなた方はエスナール王国へ行かれるのですか?」
見知らぬ男が声をかけてきた。