姫様、起きる
プリシアが買い物袋を抱えて帰ってくると、アナスタシアが椅子に座りテーブルに置いておいた食事を食べている最中だった。
「あっ、おかえり。」
「姫様、お目覚めでしたか。よいしょっ!」
プリシアが買い物袋をベッドに置く。
「何を買ってきたの?」
「はい、そろそろ旅の準備をしなくてはと思いまして。」
プリシアが袋から干し肉や調味料を取り出してみせる。
「あとは……ジャーン!」
プリシアが別の袋から洋服を取り出し広げて見せる。
「服?」
「はい。昨日着ていらっしゃった服は血塗れで切り裂かれていたのでもう着れなかったので。」
「あーそっかぁ。ありがとう、助かったよ。」
「いえいえ。それより身体は休まりましたか?」
「うん。お陰様でね。まだシャントは来ていないよね?」
「ええ、たぶん。私が出掛けるまでは来ていませんでした。」
「じゃあそろそろ私も着替えようかな。」
アナスタシアは残りの食事を食べ終えると椅子から立ち上がり寝巻きを脱いだ。
「せっかくだしそれ着てみようかな。」
「かしこまりました。」
プリシアは寝巻きを受け取ると買ってきた洋服を渡した。アナスタシアは姿見の前にいくと、洋服を着て何度かポーズをとる。
「うんうん。いいじゃない。」
「ふふ、ありがとうございます。」
アナスタシアは着替え終わると再び椅子に座る。
「いま、お茶を淹れますね。」
「うん。」
プリシアは一階へ向かうとポットに熱湯を貰ってきた。
てきぱきとお茶の準備をしているプリシアにアナスタシアが話かける。
「そういえばジイ達は?」
「ヴォルフ様は怪盗さん達のアジトの事を憲兵さん達に報告にいかれました。グレンさんは部屋で休むとおっしゃってましたよ。」
「そっかぁ。そろそろ帰ってくるかなぁ。」
「そうですね。シャントさんが来る事はわかってらっしゃいますから、そろそろお戻りになられる頃でしょうか。」
プリシアがアナスタシアに紅茶を差し出す。
「ところで、シャントさんがいらっしゃったら何をされるんですか?」
「うーん。提案?勧誘かな~?まあみんな揃ったら話すよ。」
アナスタシアは紅茶を一口飲むとそう答えた。すると、
コンコンとドアがノックされた。
「儂です。」
外から声がした。
「噂をすれば……だ。」
アナスタシアが言った。