姫様はおねむ
アナスタシア達は一度宿に戻り身体を休めた。特にアナスタシアは疲労困憊で、部屋で改めて全身の傷をプリシアに治療してもらったら朦朧とする意識の中風呂に入るとベッドで泥のように眠った。プリシアはアナスタシアが寝息を立て始めたのを確認してから自分も風呂に入りベッドに横になった。
「お主も休んだらどうじゃ。」
隣室。ヴォルフがグレンに声をかける。
「ああ、流石にそうさせてもらうぜ。」
「手はもうよいのか?」
「ああ、プリシアのお蔭でな。」
「ふむ。」
「爺さんは?」
「儂も休むとするか。官憲には昼頃に行ってくるとするわい。」
ヴォルフはアクビをすると部屋の灯りを消した。
※※※※※
太陽が真上に来た頃にヴォルフは一人で官憲のもとへ向かった。
「お一人で良かったのでしょうか?」
「ん?まあ爺さんが一人で十分だって言ってたしな。」
昼前に起きたプリシアとグレンは宿の一階にある食堂で昼食をとっていた。ちなみにアナスタシアは熟睡中である。
「爺さんなら上手いこと説明してくれるだろ。」
「そうですね。」
「で、あの嬢ちゃんは夕方に来るかね?」
「来ると思います。私もそれまでには戻るようにしますね。」
「どっか出掛けるのか?」
「はい。ちょっと買い物に行こうかと。あっ、でもグレンさんもお出かけされるなら私が留守番してますよ?急ぎでもないので。」
「いや、俺は部屋で休ませてもらうわ。」
「そうですか、お留守番お願いします。」
二人は食事を終えると、アナスタシアとヴォルフのぶんの軽食を包んで貰い部屋に戻った。プリシアはアナスタシアのぶんの食事をテーブルに置くと、書き置きをして部屋を出た。
※※※※※
「しかし、よく見つけましたな~!」
憲兵の一人がヴォルフに言う。
「いやはや、後を尾行けて驚きました。まさかこんな階段が隠されていたとわ。」
ヴォルフは憲兵数名とアジトの跡地に来ていた。
「隊長!積み込み終わりました!」
「そうか。では先に盗品だけ持っていけ。」
「はっ!」
地下室にあった盗品を積んだ馬車が動きだした。
「さっそく手配書を街中に張りだします。ご協力感謝します。」
「いえいえ。お力になれたのならなによりです。」
ヴォルフは憲兵にアジトの場所を伝えると共に現場まで来ていた。馬車内で怪盗団達の事を聴かれたが、交戦の末に捕り逃してしまったと説明したのである。さらに手配書の作成の為に賊達の容姿について聴かれたが、アナスタシアとグレンに聴いていた情報を踏まえて、ネーブル達の特徴を伝えておいた。
「さて、そろそろ儂は帰ってもよろしいかな?」
「あっ、はい!ありがとうございました。宿まで馬車でお送りしますよ。」
「それはかたじけない。お言葉に甘えさせて頂きます。」
ヴォルフと憲兵隊長は馬車に乗り込むと、まだ地下室周辺で作業をしている兵を残してその場を去った。