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姫勇者アナスタシア冒険譚  作者: 森林木
169/281

Interlude

「え!?」


プリシアに向かってナイフが飛ぶ。


「ぬっ!」


それをかろうじてヴォルフが杖で叩き落とす。凄まじい速度でナイフを手にした御者がヴォルフに斬りかかる。


「しっ!」


御者の二連斬りをかわすヴォルフ。


「ぐっ!」


御者はヴォルフを後方に蹴り飛ばすとその反動を利用しプリシアに接近する。


「えっ?えっ?」


状況が理解できないプリシアの首にナイフが向けられる。それを見たヴォルフが瞬時にネーブルに駆け寄り同じく杖を向ける。


「ぐぬぅ……油断したわい。」


お互い人質を取り合った状態で睨み合う。御者は先程とは別人の様な顔でヴォルフの一挙手一投足に注意を向けている。


「ふぅ……。困ったことになったな。」


ネーブルが視線だけをヴォルフに向けて言う。


「ヴォルフ様……ご、ごめんなさい……。」


プリシアもヴォルフを見る。


「ぬぅ……。」


ヴォルフの額に汗が滲む。


「やれやれ、商人らしく交渉といこうじゃないか。ご老人。」


ネーブルがヴォルフに語りかける。


「ほう。申してみぃ。」

「至極簡単な事だ。私らを見逃せ。その代わりその娘は解放する。」

「盗品は諦めると?」

「命あっての物種だからな。」


ヴォルフはプリシア、御者、ネーブルへと視線を移す。


「方法は?」

「商談成立ということかね?」


ネーブルがニヤリと嗤う。


「あまり儂を怒らせるでない。」

「失敬。私を馬車に乗せろ。そいつと娘をここに残す。追跡できない距離まで離れた頃に娘を解放する。」

「お主が離れてから其奴がその子を殺すかもしれん。」

「疑り深いな。ではどうするか……。」

「お主に術式を施す。」

「じゅつしき?なんだそれは?」

「もし、その子を解放しなかった場合はお主を殺すように儂が術を施すということじゃ。無論、その男も殺す。」


いつになく苛烈な言葉を使うヴォルフ。


「…………。」


ネーブルは考える。


(この魔術師のジジイ。只者じゃない。下手に藪をつつくのは得策ではないか……。)


ネーブルは今まで用心棒を雇うために数多の腕自慢達に会ってきた。それらと比べてもこの老人は異質だ。それはネーブルの商人として培った人を見る目によるものか。


「それでいいだろう。」


ネーブルが了承したことに僅かに動揺する御者。


「では上に行こうか。早く帰って休みたいわい。」


ネーブルの軽口に促され四人は地上へと上がる。


「ほら爺さん、早くしてくれ。」


ヴォルフの杖が淡く光る。


「…………………。」


ヴォル何事かを呟くと、ネーブルの額に小さな魔方陣が浮かぶ。


「これで、離れた位置からでもお主の頭を爆発させられる。」

「お~怖い怖い。それで?」

「其奴がその子を解放したら消してやろう。」

「わかった。信じるよ。」


そう言うと前の馬車に乗り込むネーブル。すぐに馬車は走り出した。しばらく無言でその場で睨み合う御者とヴォルフ。十分離れたと判断したのか御者がナイフを下ろし、プリシアから離れる。


「ヴォ、ヴォルフ様っ!」


プリシアがヴォルフに駆け寄る。


「申し訳ございませんでした!私っ……私っ!」

「フォフォフォ。よいよい。お主が無事ならそれでよい。」


いつもの好好爺の顔になり微笑むヴォルフ。ヴォルフは先程と同じように呪文を呟いた。


「さあ、術式は消してやったぞ。お主も行くがよい。」


御者に向かってヴォルフが言う。御者は素早く残された馬車に乗り込み走り出した。


「ヴォルフ様……これからどうしましょうか?」

「そうじゃな。姫様とグレンを待つしかないのぅ。それにあの青年達もあのままにはしとけんじゃろ。」


二人は踵を返すと再び地下室へと降りて行った。


御一読頂き誠にありがとうございました。

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